【ニュース・アメリカ】米国政府、気候変動報告書「米国気候評価」第2弾を発表

 
アリゾナ大学(University of Arizona:UA)教授のダイアナ・リバーマン(Diana Liverman)氏らを含む科学者が執筆した気候変動に関する報告書「米国気候評価(National Climate Assessment)」の第2弾が2018年11月23日に発表された。
 
本報告書は、気候変動は経済・衛生・環境などに悪影響を与えているとし、その例として、カリフォルニア州での記録的山火事、中西部における穀物不作、南部におけるインフラ崩壊などを挙げている。また、21世紀末までの気候変動による米国経済への影響として、熱中症死者発生による影響1,410億ドル、海面上昇による影響1,180億ドル、インフラへの損傷による影響320億ドルと、具体的な損害額を予測している。
 
本報告書発表の約1カ月前には、国連が招聘した科学者グループ「気候変動政府間委員会(Intergovernmental Panel on Climate Change)」も、2040年までに予測される深刻な経済・人道的危機に関する報告書を発表したが、「米国気候評価」では、米国及び世界の国々が、地球温暖化緩和に向けて迅速且つ断固とした行動をとるべきであることを強調している。
 
本報告書の結果は、トランプ政権の主張と相反するもので、大統領府は、大半の結果は非常に極端な地球温暖化シナリオに基づくものとしながら、報告書作成に携わった科学者は、大統領府による内容の改ざんや抑圧などはない模様としている。
 
主な結果は以下の通り。

  • 干ばつにより水力発電量が低下するほか、水の供給がさらに制限される南西部、沿岸部の洪水と浸食のために住民が移住を余儀なくされるアラスカ州、塩水が飲料水を汚染するプエルトリコ・バージン諸島など、米国内で気候変動による影響を受けない地域はなし。
  • 熱波による死者増加と、高温気候による疫病大流行の危険性が増大。
  • 気候変動による影響を特に強く受ける領域は、貿易と農業。例えば、ハードドライブ製造の60%をタイで行う米国企業のウエスタン・デジタル(Western Digital)社は、2011年に発生した洪水の影響で1億9,900万ドルの損害を出した他、2011年第4四半期のハードドライブ出荷量が半減し、ハードドライブ価格が一時的に倍額まで高騰。また、降雨の変化と高温により、中西部の農業生産性は、2050年までに1980年代レベルまで低下すると予測。

なお、本報告書は、
https://nca2018.globalchange.gov/downloads/からダウンロード可能。
 
2018年11月23日
 
The New York Times:U.S. Climate Report Warns of Damaged Environment and Shrinking Economy

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