【ニュース・アメリカ】米国における中絶ケア、居住地によって顕著な違い 地域によっては科学的根拠のないリスク情報が提供されている例も

 
米国科学工学医学アカデミー(National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine)は2018年3月16日、中絶をした女性のケアに関する調査報告書「米国における中絶ケアの安全性と質(The Safety and Quality of Abortion Care in the United States)」を発表した。
 
これによると、米国における合法な中絶は、大半は診療所で行われて安全ではあるものの、各女性のニーズに応じた中絶サービスの種類は、居住地によって顕著な違いがあることが明らかにされた。
 
本報告書では、米国で使用される、①薬剤、②吸引、③子宮内容除去術、④誘導、という4種類の中絶手段の安全性と質に関する科学的証拠を検証し、安全性、有効性、患者中心性、適時性、効率性、公平性を評価した。
 
米国では、大半の中絶は妊娠初期に行われ、2014年には、90%の中絶は妊娠12週までに行われており、手段に関わらず、中絶による深刻な合併症は非常に稀で、安全性と質が最優先され、できる限り早期に行われている。
 
但し、州によっては中絶に関する特別な規制が安全且つ有効なケアの障壁となることがあり、適格な医師による中絶が行われないことや、中絶のリスクに関して誤った情報が中絶を考える女性に提供されること、医療的に不必要なサービスの義務付けからのケアが遅れることなどが発生する可能性があるとし、これには、待期期間の義務付け、中絶前超音波診断、対面カウンセリングなどが含まれる他、一部の州は、医師に対し、中絶が乳がんや精神疾患のリスクを高めることを書面もしくは口頭で中絶を考える女性に伝えることを義務付けているが、これらに科学的根拠はないとしている。
 
また、2014年には、中絶が可能な診療所が2011年から17%減少し、妊娠可能な年齢の女性の39%は適切な中絶のための診療所のない郡に居住しているといい、2017年には、中絶診療所が州内に5カ所以下の州が25州、1カ所の州が5州であること、そして、約17%の女性は、50マイル以上をかけて中絶を受けに行くことなどを明らかにしている。
 
その他の主な結果は以下の通り。

  • 19州では、経口妊娠中絶剤のミフェプリストンを提供する時に医師の立ち合いを義務付け。
  • 17州では、薬剤による中絶を行う際に、手術施設のある診療所もしくは病院で行うことを義務付け。
  • 1980年から2014年の間に、米国における中絶実施率は、妊娠可能な年齢にある女性1,000人につき、推定29人から15人に減少。

なお、本報告書は、「THE SAFETY AND QUALITY OF ABORTION CARE IN THE UNITED STATES」で閲覧可能。

 

2018年3月16日
 
National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine:The Quality of Abortion Care Depends on Where a Woman Lives, Says One of Most Comprehensive Reviews of Research on Safety and Quality of Abortion Care in the U.S.

 

地域 北米
アメリカ
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