【ニュース・アメリカ】学術論文筆頭著者のいわゆる「人種」的及びジェンダー・アイデンティティと研究テーマとの間に関連性

 
ベリー大学管理情報システム助教の シーマ・モンロー・ホワイト氏らは、学術論文数百万本とそれらを執筆した研究者に関する分析を行った結果、学術論文筆頭著者のいわゆる「人種」的及びジェンダー・アイデンティティと研究テーマとの間に関連性があり、マイノリティグループの研究者が、比較的引用数の少ない研究テーマの論文著者である割合が非常に高いことを明らかにした。

 
モンロー・ホワイト氏らは、非白人・女性研究者不足が研究テーマの偏りの原因になっていると警告し、過去40年間に発表された論文執筆者の人口統計学的内訳が米国民全体の人口統計学的内訳を反映するものであった場合、公衆衛生関連論文29%増、ジェンダーに基づく暴力関連論文26%増、女性科学・老年学関連論文25%増、移民・マイノリティ関連論文20%増、精神衛生関連論文18%増となるところであったとしている。2008年~2019年に「ウェブ・オブ・サイエンス」データベースの索引に載せられていた論文540万本及び米国拠点の筆頭著者160万人を分析した主な結果は以下の通り。

  • 米国の人口全体と比較して、筆頭著者全体に白人及びアジア系研究者が占める割合が非常に高いのに対し、黒人及びラテン系研究者は少数派。
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  • 分野別でみると、物理学・数学・工学分野では黒人・ラテン系・白人女性研究者が非常に少なく、衛生・心理学・芸術分野で非常に高い傾向。また、アジア系女性研究者は、芸術・人文科学・社会科学分野で非常に少なく、生物医学研究・科学・臨床医学分野で非常に高い傾向。一方、黒人・ラテン系・白人男性研究者は、心理学・衛生分野において少数派で、アジア系男性研究者は、これらの分野に加えて人文科学・社会科学分野での少数派。但し、アジア系男性研究者は、物理学・工学・数学・科学分野で非常に高い傾向。
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  • 男性研究者が筆頭著者の論文は、女性研究者が筆頭著者の論文よりも引用件数が多い傾向。また、アジア系研究者が筆頭著者の論文は、黒人・ラテン系・白人研究者が筆頭著者の論文よりも引用件数が多い傾向。
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  • アジア系研究者が筆頭著者の社会科学分野における論文のテーマは、株式・消費者・企業・市場などといった経済・ロジスティクス関連が主流であるのに対し、白人・黒人研究者によるこれらのテーマでの論文は最小。黒人研究者の場合、人種主義・アフリカ系米国人文化・アフリカ研究・コミュニティなどが主流。宗教をテーマとする論文の執筆者は、黒人・白人研究者が主流。一方、ラテン系研究者の場合、移民・政治的アイデンティティ・人種主義などのテーマが主流。

なお、モンロー・ホワイト氏らが執筆し、2022年1月3日付「米国科学アカデミー紀要」に掲載された論文「科学において共通する不平等」は、
こちら からダウンロード可能。

 
1月4日


Inside Higher ED: How Identity Shapes Science


地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
人材育成 研究人材の多様性
統計、データ 統計・データ