ワシントン大学(University of Washington)衛生基準・評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation:IHME)ディレクターのクリストファー・マレー(Christopher Murray)氏らは、教育及び医療ケアへの投資を経済成長へのコミットメントの基準とした研究結果をまとめた論文「人的資本の評価:195カ国・地域の系統的分析、1990年~2016年(Measuring human capital: A systematic analysis of 195 countries and territories, 1990 to 2016)」を、国際医療学術誌「ザ・ランセット(The Lancet)」において発表した。
本研究は、2,522件の調査・国勢調査結果を、平均余命・機能的健康状態・在学年数・学習などを勘案しながら系統的に分析し、20~64歳の45年間に最高の生産性の下で働くことができる年数を期待人的資本として算出している。これによると、米国は、1990年時では6位にランクされたのに対し、2016年時の期待人的資本は23年で、1990年時の22年から1年長くなっているにもかかわらず、順位は27位に後退しているという。一方、中国は、1990年時の69位から2016年時には44位まで向上している。マレー氏は、米国は特に教育に対する戦略的投資を行わない限り、さらに順位を落とす可能性があると警告している。
主な結果は以下の通り。
- 2016年時の期待人的資本が最高であったのはフィンランドの28年で、アイスランド・デンマーク・オランダが27年、台湾が26年でこれに続く。
- 2016年時の期待人的資本が最低であったのはニジェール・南スーダン・チャドの2年で、ブルキナファソとマリの3年がこれに続く。
- 2016年時の期待人的資本が20年以上であったのは44カ国・地域で、10年未満であったのは68カ国・地域。
- 2016年時に人口密度の最も高い10カ国とそのランキングは、中国(44位)、インド(158位)、米国(27位)、インドネシア(131位)、ブラジル(71位)、パキスタン(164位)、ナイジェリア(171位)、バングラデシュ(161位)、ロシア(49位)、メキシコ(104位)。
なお、本研究論文の要約及び資料などは、以下より閲覧可能。
Measuring human capital: a systematic analysis of 195 countries and territories, 1990–2016
2018年9月24日
Institute for Health Metrics and Evaluation:Unprecedented study finds nations failing to invest in education and health care at risk of slow economic growth