厚生省(Department of Health and Human Services:HHS)監査総監室(Office of Inspector General:OIG)は9月25日、国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)科学審査センター(Center for Scientific Review:CRS)による助成申請書ピアレビュアー候補者の詳細審査に関し、長所・短所を検証した報告書「NIH科学審査センターにおけるピアレビュアーの詳細審査 ~長所と短所~(Vetting Peer Reviewers at NIH’s Center for Scientific Review: Strengths and Limitations)」を発表した。
本調査は、NIH助成申請書のピアレビューにおいて、機密情報が不適切に外部と共有されている可能性に対する懸念をNIHのフランシス・コリンズ(Francis Collins)長官が2018年8月に表明したことを受け、議会からOIGにNIH助成プログラム・運用監督予算500万ドルが割り当てられたことによって実施された。OIGは、NIHのCSR、外部研究局(Office of Extramural Research)、管理評価局(Office of Management Assessment)、及び、連邦諮問委員会政策局(Office of Federal Advisory Committee Policy)職員と面接を行った他、ピアレビュアーの詳細審査に関連するNIHの方針・指針・研修資料などを検証した。
その結果、CSRによる詳細審査の長所には、
- レビュアー候補者の科学専門性を、論文や助成受給歴などを含む複数の資料に基づいて確認
- ピアレビュー設定におけるコミュニケーション能力を検証
- 候補者が臨時レビュアーやNIH助成受給者として過去にNIHに関与した経験に基づく評価
- 不正研究やピアレビュー違反を行ったことのない候補者のみを採用
などが挙げられた。
一方、短所として、北米以外を拠点とするレビュアーの審査に義務付けられている要件以外では、外国との関係に対してほとんど注意が払われていないことが挙げられた。これらの結果を受け、OIGは、NIHに対し、
- ピアレビュアー候補者の詳細審査に関する指針を更新し、必要に応じて国家安全保障専門家の助言を受けながら、研究整合性に対する外国による脅威の可能性を特定すること
- 厚生省国家安全保障局(Office of National Security)と協力して、さらなる精査を必要とするピアレビュアー候補者を特定するために、リスクに基づくアプローチを開発すること
の2点を提案した。NIHはいずれの提案にも同意している。
なお、本報告書は、こちらからダウンロード可能。
HHS Office of Inspector General:Vetting Peer Reviewers at NIH’s Center for Scientific Review: Strengths and Limitations