【ニュース・アメリカ】全米9州で導入されている超過単位時間政策、大学卒業率向上には効果がなく学資ローン負債額が増加

米国教育研究協会(American Educational Research Association:AERA)は、フロリダ大学(University of Florida)教育学部助教のデニス・クレイマー(Dennis A. Kramer II)氏らが行った、公立大学で学士号取得に必要な単位数以上の履修を抑止するために、現在アリゾナ州やフロリダ州など9州で導入されている「超過単位時間(Excess credit hour:ECH)」政策の成果に関する研究の結果が2017年7月20日付の学術誌「教育評価と政策分析(Educational Evaluation and Policy Analysis)」で発表されたことを明らかにした。

 

ECH政策は、履修単位数が卒業に必要な単位数を超える場合、1単位当たりの授業料を通常の115~130%に引き上げるというものである。クレイマー氏らは、教育省(Department of Education)、労働統計局(Bureau of Labor Statistics)、及び、州協会全米協議会(National Conference of State Legislatures:NCSL)からのデータを使用して、ECH政策導入から4~6年後の大学の卒業率と卒業生の学資ローン負債状況を調査し、本政策導入の効果を検証した。

 

その結果、本政策の導入と入学後4~6年以内の卒業率及び学位付与数との間には顕著な関係性はなく、ヒスパニック系学生が6年で卒業する割合は2.5~3.4%増となった一方で、アフリカ系学生が6年で卒業する割合は3.5~4.2%減となったことが明らかにされた。また、学資ローン負債額に関しては、ECH政策導入から4年後の負債額中央値が5.7~7.2%増となっており、特に負債額の増加は低・中所得層学生に集中していることが判明した。クレイマー氏らは、ECH政策の導入は、目的とする入学後6年以内の大学卒業率の向上には効果がなく、低・中所得層学生の負債増につながることは懸念すべき状況であると結論付けている。

 

2017年7月20日

 

AMERICAN EDUCATIONAL RESEARCH ASSOCIATION:State-Adopted Credit Hour Policies Associated with Increases in Student Debt but Not Graduation Rates

地域 北米
アメリカ
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