【ニュース・アメリカ】カリフォルニア大学ヘースティングス校、子どもを持つポスドク研究者の厳しい現状に関する調査結果を発表

カリフォルニア大学ヘースティングス校(University of California, Hastings)ワークライフ法律センター(Center for WorkLife Law)の妊婦学者プロジェクト(Pregnant Scholar project)と米国ポスドク協会(National Postdoctoral Association)は、子どもを養育中のポスドク研究者に関する調査報告書「経路の途上にある親~家族を持つポスドク研究者の保持~(Parents in the Pipeline:Retaining Postdoctoral Researchers With Families)」を発表した。

 

本報告書は、子どもを持つポスドク研究者に関する初の全米レベルでの調査報告書で、子どもの誕生・養子縁組約800件を経験したポスドク研究者741人からの回答に基づいて作成されたものである。同報告書は、研究機関に対し、ポスドク研究者の在任期間は平均4~5年、恒久的な立場が保証されるのは30代後半になってからで、子どもを持つポスドク研究者が増加しているという現実を鑑みて、方針を更新するよう強く要請している。

 

主な懸念事項として挙げられているのは、健康に関連する対応を必要とする妊娠したポスドク研究者に対する処遇の傾向で、妊娠による身体への負担を考慮した対応を申請したポスドク研究者の93%はそれを認められているものの、申請したのは対象となる女性研究者の40%のみで、特に大学勤務のポスドク研究者は、申請しない傾向が強いことが明らかにされた。
また、出産後に十分な休暇をとることができずに健康を損ねる事例、出産後の職務への復帰を予算不足を理由に断られた直後に新しい研究者が採用された事例、子どもの養育が制約となるとして出産した研究者の予算が別の研究者に回された事例、新しく父親となったポスドク研究者が育児に参加するための時間の調整に周囲は非協力的で、病欠を使うことすら許されない事例などがあることが明らかにされた。その他の主な結果は以下の通り。

  • 調査に参加した研究機関の53%において、正規職員であるポスドク研究者に対する母親向け有給産休制度なし。また、外部からの資金提供を条件に雇用されているポスドク研究者の場合、74%が有給産休制度なし。
  • 50%以上の研究機関において、正規職員であるポスドク研究者に対する父親向け有給育休制度はなし。また、外部からの資金提供を条件に雇用されているポスドク研究者の場合、85%が有給育休制度なし。
  • 母親となったポスドク研究者の約20%は、上司の対応が担当研究に悪影響を与えたと回答。一方、父親となったポスドク研究者では約10%。

なお、本報告書は、以下よりダウンロード可能。
Center for WorkLife Law:Parents in the Pipeline:Retaining Postdoctoral Researchers with Families[PDF:2.27MB]

 

2017年6月22日

 

Inside Higher ED:Helping Postdocs With Children

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
人材育成 研究人材の多様性