ブラジルの大学における遠隔教育の広がりについては以前の報告書でも述べた通りですが、最近発表されたアニジオ・テイシェイラ国家教育調査・研究院(INEP)およびブラジル教育省(MEC)の調査結果から、2011年から2021年にかけて、通信課程の大学への入学者が474%増えたことが明らかになりました。
この流れは民間の大学においてみられるもので、2019年に通信課程の在籍者数は通学課程のそれを上回り、2021年にはその割合が70.5%となり、1673万6850人が通信課程に在籍する計算となりました。
一方、遠隔教育を比較的低価格で提供することにおいて、懸念されるのは教育の質と職業訓練としての効果です。地理的、経済的な理由で高等教育を受けられなかった人々が大学教育を受けられる、就労に必要な知識や技術の提供が可能になるなど遠隔教育には様々なメリットがありますが、知識の提供・応用をいかに確実に行うかという課題があります。また、自己の成長や他者との共存において重要となる、教員や他の学生とのコミュニケーションや交流のスキルも、対面での交流の機会が失われることで衰えていきます。
また、調査で明らかになった別の問題として、化学や物理学などの教員養成課程を希望する人が減っていることが挙げられます。これら課程の在籍者は公立大学においては定員の50%、民間の大学においてはわずか3%にとどまっており、これらの学問の教員不足や化学業界など関連セクターにおける人材不足が懸念されることから、学生の関心を喚起するためのこれら職業の価値の見直しが求められます。
国の発展における教育の重要性という観点からみると、化学や物理学の教員にとどまらず、教員という職業そのものの価値の評価があって然るべきです。教育の重要性に異議を唱える人はいませんが、将来の人材育成を担う教員の価値を評価する取り組みは政府においてほとんど行われていないのが現状です。
地域 | 中南米 |
国 | ブラジル |
取組レベル | 大学等研究機関レベルでの取組 |
大学・研究機関の基本的役割 | 教育 |
レポート | 海外センター |