2023年、教育部直属の師範大学(訳注:教員養成を目的とする大学)の公費卒業生の就業にどう取り組むのか。教育部は先日、各省級教育行政部門に対し、公費師範生のみを対象としたリクルート活動を継続的に行い、空きポストを優先的にあてがうなどの方法により、条件を満たした公費師範生に正規雇用ポストでの採用を保証すること、また、学校に全員を何らかのポストで採用させ、「ポストがあるのに補充しない」行為を断固禁じることを指示する通知を発出した。さらに通知では、2023年5月末までに公費師範生の90%を双方の選択の結果として採用することとしている。
「全員採用」。教育部の通知にあったこの文言に希望を抱いた人は多い。これは公約であり、教育部からの圧力でもあるからだ。確かに、コロナ禍等の要因で高等教育機関卒業生の就業は大きな困難に直面しており、今年に至っては「最も就職が困難な年」との嘆きがそこかしこから聞かれる。こうした中、教育部直属の師範大学の公費卒業生が特別待遇を得られるという事実は、国がそれだけ教員養成を重視していることを表している。
ただ、「2023年5月末までに、公費師範生の90%を双方の選択の結果として学校に採用させる」ならば、残りの10%はどうなるのかという疑問を抱く人がいるかもしれない。実は、関連する通知ではこの点が明確にされている。すなわち、2023年6月末時点でどの学校とも雇用契約を締結していない公費師範生は、個人情報ファイル(原文:档案)や戸籍などを実家の所在地の省級教育行政部門に移し、当該部門が関連部門と合同で教員不足の地区の小・中学校へ配属させる。つまり、公費師範生は卒業前に全員が必ずどこかの学校に採用されることになっている。換言すれば、公費師範生の就業機会は確保されており、全員に活躍の舞台が用意されているということである。
少し振り返ってみれば分かるように、公費の師範大卒業生の就業への取組みは、決して気まぐれの産物や今年だけの特別な制度ではなく、既に何年も前から実施されてきた制度的取り決めである。早くも2018年に国務院弁公庁は『教育部等部門発、教育部直属師範大学における公費師範生教育の実施方法に関する通知』において、次のように指摘している。各地方が組織的指導と制度的保障を強化し、省内の統一的な計画・調整・実施体制が要求する「ダイナミックな調整と継続使用に耐える」事業制度を確立し、優先的に空きポストを埋める等の手段により、既存の正規雇用枠の範囲内で、公費師範生の小・中学校での採用に必要な問題を適切に解決しなければならない。
以後数年間、関係部門は連続して通知を発出し、公費の師範大卒業生の就業問題に取り組み、主眼を公費の師範大卒業生の待遇向上に置くよう求めてきた。
公費の師範大卒業生を厚遇することは、草の根(原文:基層(末端組織・社会を指す中国語))教育を優遇することに他ならない。彼ら公費師範生は、教育部直属の6つの師範大学出身である。協定によれば、通常、彼らは卒業後に実家のある省(自治区・直轄市)の小・中学校に赴任する。他に「都市部の学校に赴任しようとする公費師範生は、先に農村の義務教育学校で1年以上教鞭をとらなければならない」という規定があることから、公費師範生の大部分は草の根の教育現場に赴く必要がある。高度な教員養成教育を受けた教育部直属の師範大学の卒業生である彼らが、学んだ知識を草の根の教育現場にもたらすことの意義は言を俟たない。
草の根教育に最も欠けているものは何か。それは優れた教師だと、ある業界関係者は吐露する。すべての子どもに教育を受ける機会を与えられるよう尽力すること、特に農村部の子どもたちに公平な教育を授けることで、子どもたちは自ら成長し、社会に貢献する能力を培うことができるようになる。その意味で、優れた能力を持つ公費の師範大卒業生が、使命を帯びて草の根に根差し、農村部の子どもたちに知識を授けることは、子どもたちの未来を照らすだけでなく、草の根教育に継続的に活力を注入し、好循環を築くことにつながる。
また、国が公費の師範大卒業生を厚遇し、彼らの就職を斡旋し、正規雇用を保証することは、師範生が教育について学び、卒業後に教職に就くことに対する誇りとアイデンティティを高め、国費で育成された教員としての使命感と栄誉を強化することにつながり、ひいては、より多くの優れた若者が教職の道に身を投じるきっかけになるだろう。
もちろん、公費の師範大卒業生に対する厚遇は、就業の「見える化」だけではなく、待遇・条件にも反映されていなければならない。例えば、公費師範生に農村に赴任してもらうため、事務スペースや専用宿舎など必要な職場・生活環境を提供することや、公費師範生が契約通り農村に赴任した後のOJTを国や省の育成計画に組み入れることなどが考えられる。こうした様々な優遇措置は、彼らの教員としての成長を促すだけではなく、教員としての然るべき尊厳を得るためにも必要なことだ。
教育の公平性は社会の公平性の重要な土台となる。より多くの優れた教員が「気軽に農村に赴き、長く留まり、良い教育を施す」ようになり、草の根の教育現場を公費の師範大卒業生の活躍の舞台とすることで、教育の公平性はより高まるはずだ。
2023/1/11
中国青年报: 公费师范毕业生“全部落实岗位”:善待他们就是善待基层教育
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