イノベーションヨーロッパ委員会(Conseil européen de l’innovation:EIC)は、未来構想の枠組みにおけるモデルプログラムの公募を開始した。
Horizon 2020プログラム委員会のフランスの代表であるVirginie Sivan氏によると、EICが計画する「ヨーロッパをイノベーションの中心に」を
実現するための、大幅に刷新されたHorizon Europeの枠組みプログラムである。
「これはまさにヨーロッパ研究委員会(Conseil européen de la recherche:ERC)と共に行ってきた基礎研究の刷新である。」とEICの
Jean-David Malo局長は説明する。ヨーロッパのユニコーン企業(資産価値が10億ドル以上ある新興企業)のシェアは8%であり、
アメリカの50%に遠く及ばない。
そこで、7年間で100億ユーロの予算を計上しているが、EICは支援すべき最適な企業に支援しなければならない。そしてこのプログラムを通して、
市場と研究機関の研究のギャップを埋めるために行ってきた現行のプログラムと共に様々な成果を生み出すことが期待される。
中小企業を支援する役割である「中小企業仲介者:instrument PME」は「EIC推進者:EIC Accelerator」と変更となり、スタートアップである
「新興技術オープン:FET Open」や「先見性新興技術:FET Proactive」は統合され、「EIC開拓者:EIC Pathfinder」に変更となる。
また、中長期的スパンで、市場となりうる技術革新イノベーションの発見と発展の役割を果たすことが期待される。
これまでの「FET Open」と「FET Proactive」の一部は「EIC Pathfinder」として公募が始まっており、ヨーロッパ委員会が示しているEUの
持続可能な経済の実現に関するロードマップやグリーンディール(欧州委員会が発表した気候変動対策)など他の追加支援により、それぞれの
予算は2019年と2020年に増額されている。
2020年から採択されるプロジェクトは、長期的な可能性について管理マネージャーによるモニタリングを受けるが、EICが提供する
支援やネットワークを利用することが出来る。本プロジェクトでは2019‐2020年に6億6000万ユーロの予算措置があり、3ヶ国以上の加盟国
または準加盟国のグループに配分される。
「FET Open」公募は2020年6月3日までであり、ヨーロッパの学際的な研究に基づき、革新的で挑戦的であり、確固とした技術的な目標を
記載しなければならない。更なるリスク不確定要素として、これらのプロジェクトが未来の技術を基にしているということがある。
「我々のテーマの構築はヨーロッパの連携のおかげである。」と国立科学研究所(Centre national de la recherche scientifique:CNRS)
局長で、「FET Open」(2016-2019)の財政支援を受けるプロジェクト、NanOQTechのコーディネーターであるPhilippe Goldner氏は語る。
このプロジェクトは、レアアースの特性を生かし、それらをナノ物質や極薄フィルムに挿入し、量子技術特にパソコンやコミュニケーション
ツールあるいはセンサーの性能を飛躍的に向上させることが期待される。「我々はこのプロジェクトに必要な力を結集させ、ヨーロッパのチームを
結成することが出来た。
もしチームに欠けた能力があれば、「新興技術:FET」の体系を利用し、研究パートナーを探すためのイベントを開催し、ネットワークを
構築させることが出来る」とも述べている。このシステムにより、「新興技術フラッグシップ:FET Flagship」のカテゴリーで、「量子技術」の
分野において2つのプロジェクトチームが結成された。
パイロットプログラムとして、2つのFET Proactiveが2019年に始動し、2020年に更に2つプログラムが開始される。これらのプロジェクトは
新たな研究共同体を設立し、途絶した学際的なイノベーション環境を整備するよう努めなければならない。
プロジェクト毎の予算は400万ユーロであり、公募は7月2日に終了する。最初の公募では、社会的交流のための人工知能やカーボン
ニュートラルのためエネルギーの貯蔵と変換(電池を除く)、生命科学やナノ計測学におけるデジタルツイン等、様々な分野を対象とする。
第2回は環境情報の分野を対象とする。最終的にEICは「FET Open」と「FET Proactive」を統合し、プロジェクトを財政的に支援する
「連続的な財政支援組織」を確立し、EICのパイロットプロジェクトから「FET発射台プログラム」の設立を目標としている。
10万ユーロが上限で、全てのテーマを対象としている。すでに実施している「FET Open」、「FET Proactive」、「FET Flagship」を
加速させることを目的とし、特許取得や市場研究の推進が期待される。
5月5日