【ニュース・ドイツ】一生に一度の機会の修士号

 
アフリカのためのリーダーシップ」という奨学金プログラムによって、DAAD はサハラ砂漠以南の10か国の難民や現地民にドイツの大学での修士学位を目指して勉強できるようにした。毎年50人の奨学金受給者を選出することは相当な労力が必要とされ、サポートは徹底している。しかし、この成功は次のようなことを物語っている。3年間で申請者数は文字どおり爆発的に増加した。このプログラムは今や継続性のあるものになっており、DAAD の標準プログラムの一部になるだろう。

 
DAAD が提供する助成金や奨学金のプログラムの中で、特別なグループを対象としているために際立っているものもある。それは「アフリカのためのリーダーシップ(LfA)」という奨学金プログラムで、サハラ以南の特定の国に在住権を持ち、難民状態にある学士号を所有する若者を対象とするものである。彼らの多くにとって、ドイツで修士号を取得する機会は、社会進出のための大きなチャンスあるいは唯一のチャンスになる場合もある。「特に難民は、金銭的な理由あるいは、難民キャンプに住んでいるなどして単に移動の自由がないために、居住国で学位を取得することやキャリアを始めることを妨害されることが多いのです。」と DAAD のアフリカ奨学金部門の部長 Gudrun Chazotte 氏は言及している。「しかし修士号によって彼らの人生で何事かをなす機会は確実に増大します。特に重要な点は、奨学金受給者は難民としてではなく、留学生としてドイツにやって来るということです。彼らは、邪魔な特別な立場から我々が助け出すことのできる極めて優れた人々なのです。」

 
包括的な奨学金パッケージ

 
具体的に言えば、2020年に初回が始まったこのプログラムは、難民や東西・中央アフリカの毎年変更のある国の難民と国民向けに50枠を提供する。これは連邦外務省から1年に約400万ユーロの資金が提供されるものである。もう一つの特徴(特別なグループを対象にしていることに加えて)は、奨学金受給者向けの徹底的なサポートにある。例えば、彼らは適切な学習コースを見つけたり、入学手続きの際のサポートのみならず、保険や渡航費のサポートも受けられる。必修の語学コースに加えて、この奨学金はリーダーシップや優れたガバナンスの知識、仕事をより容易に見つけられるようになるソフトスキルの訓練など、包括的な付随プログラムも含んでいる。これには具体的な背景がある。ドイツの大学で修士課程を修了し、その後18か月以内にドイツの労働市場に参入することができた外国人が、居住あるいは労働許可を取得できるというものである。「もちろん我々は、卒業生が母国に戻って、身につけたスキルで母国を更に発展させることを期待しています。」と Gudrun Chazotte 氏は言う。「その一方、我々は教育歴やスキルに見合った機会を現地で見つけられない人々についても話し合っています。このことは当然ながら自国から離れざるを得ない全ての人々にも当てはまります。

 
DAAD 基準による選考

 
「アフリカのためのリーダーシップ」の対象を特別なグループに設定しているにもかかわらず、DAAD の他の奨学金プログラムと同様の基準に則って申請者の中から選考されている。「事前の資格審査と面接という独自の選考は全てのケースで優先されます。」とChazotte氏は語る。「ドイツの大学自身が修士学生として受け入れるかどうかを決めるということを知っているので、我々がこれ以上他にできることはありません。DAAD として、奨学金に連動して、大学に入学できないような申請者を事前に選出するようなリスクを冒すことはできません。」

 
このような状況は、「アフリカのためのリーダーシップ」の選考過程が他の多くの DAAD の資金提供プログラムよりもはるかに入念で複雑であることを示している。「我々は現地オフィスや講師、各国の在ドイツ大使館のみならず、同窓会や同窓生、ソーシャルメディアを通じてプログラムを広報することが多いです。」と Gudrun Chazotte 氏は話している。「しかし難民の多くはこれらのチャンネル経由で情報にたどり着くことができません。なぜなら彼らは大学に在籍していないからです。あるいはノートパソコンを持っていなかったり、インターネットに接続できないといった事情もあります。そのため我々は国連難民高等弁務官事務所(UNCHR)と密接に連携して難民たちに情報が届くように努めています。難民キャンプのオフィス内のパソコンから送信された申請書を受け取ることも珍しくありません。」選考過程には関係する全ての人にとっての課題があります。「ときには申請者と審査員が電話で面接したり、パスポートや書類の紛失のような事務的な障害が起きたり、多くが未知の領域になっている。」しかしドイツの在外公館、大学やUNCHRのスタッフの優れた働きのおかげで、問題の多くを解決することができた。「努力が報われることを認識できる瞬間です。」と Gudrun Chazotte 氏は語っている。

 
「注目すべき個性の持ち主」

 
2020年の「アフリカのリーダーシップ」開始時の申請者数は約500人だった一方で、今年は申請者数が1,200人以上に増加している。ベルリンで6月22日、23日に行われたキックオフカンファレンスにもまた反響の大きさが表れている。ここで「LfA」の助成金獲得者は自分たちの経験について報告し、大学、政界、外務省からの参加者を目に見えて感動させた。「奨学金がもたらす機会を活用しようとして、人生を前向きに捉える人たちの中には注目すべき個性の持ち主がいます。対処しなければならない運命の巡り合わせにもかかわらず、あるいはそのせいなのか、彼らはそのように行動しているのです。」Gudrun Chazotte 氏は「その会議時に求人のオファーを受け取ったある参加者は、ドイツ語の運用能力が十分ではないことを理由に、そのオファーを受けることができませんでした。」と話している。

 
「アフリカのためのリーダーシップ」は今では DAAD の標準プログラムの一つになっており、DAAD のポートフォリオでのギャップを埋めるため今後も継続される予定です。このプログラムは発展途上国のための DAAD の第三国プログラムを補完するもので、サハラ以南の国々にも焦点を当てています。このプログラムで DAAD は発展途上国における、特に高等教育機関における未来の専門家や経営者の育成を促進します。「LfA」と対照的に、連邦経済協力開発省が資金提供する Surplace/第三国プログラムは、母国あるいは近隣の第三国で修士もしくは博士の研究を継続することを希望する卒業生を対象としています。Gudrun Chazotte 氏曰く「このようにして、二つのプログラムはお互いを完璧に補完し合っているのです。」

 
2022年8月25日


DAAD: Ein Master-Abschluss als Chance des Lebens


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ドイツ
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