【ニュース・デンマーク】研究教育委員会がBrexitによる教育・研究への影響の分析結果を公表

2018年6月29日、デンマーク科学高等教育庁(Danish Agency for Science and Higher Education)は、イギリスのEU離脱、すなわちBrexitがデンマークの教育及び研究に与える影響の分析結果を公表した。同庁の委託を受けてデンマークのシンクタンクであるDEA(Think Tank DEA)及びEUROPAが調査を行い、2部構成の報告書として分析結果が公表された。

 

イギリスの研究機関との今後の協力についてどのような選択肢が考えられるかについて分析している他、Horizon 2020(以下、H2020)、エラスムス+(Erasmus+)プログラム、以前のEU枠組みプログラムに焦点を当て、これらのプログラムを通して、デンマーク及びイギリスの研究機関の交流がどれ程拡大したかを明らかにしている。調査では、研究及び高等教育の専門家39名に対して、Brexitがもつ様々な側面についてのインタビューがそれぞれ45分から60分間行われ、Brexit交渉における有効なモデルが検証された。

 

イギリスはH2020による資金配分の「実質的な受領者」である。以前のEU枠組みプログラムFP7(2007-2013)では、54億ユーロ(約7,000億円*)を拠出した一方で、86億ユーロ(1兆1,000億円*)を受領したと見積もられている。
FP6(2002-2006)及びFP7と同様にH2020においても、イギリスの研究機関はデンマークの研究機関の主要な協力機関の1つである。H2020では、デンマークに対して行われた資金配分のうち45%が、少なくとも 1つのイギリスの研究機関を含む研究計画であった。このイギリスの研究機関が含まれている割合は、研究基盤整備(94%)及び宇宙研究(79%)の計画において特に高く、デンマークの研究機関がH2020において資金提供を受けた579の計画に延べ1,468のイギリスの研究機関が参加している。これに該当するデンマークの主な機関及びその配分額は、デンマーク工科大学(配分額5,500万ユーロ(約71億円*))、コペンハーゲン大学(配分額3,730万ユーロ(約48億円*))、オーフス大学(配分額3,310万ユーロ(約43億円*))である。

 

「2014年には、イギリスの高等教育機関に3,000人以上のデンマーク人学生がおり、また多数のデンマーク人研究者が同国の研究機関と協力し、同国の研究機関に雇用されているため、渡英に関する規則の小規模な変更でさえ、デンマーク人学生、教員及び研究者にとって問題となるだろう。イギリス及びベルギーの両国では、研究及び高等教育分野での協力に関する協定の締結に関心が高まっているが、Brexit交渉では、これまでこれらの分野に焦点を当てていない。この状況は、特にデンマークにとって重要となるこれらの分野における合意形成に、十分な時間を割くことができない危険性をはらんでいる。」と、報告書は記している。

 

インタビューへの回答では、ドイツやフランスの優位性についての一貫した意見はあまり見られない一方で、研究に深い関心を寄せているオランダ、スウェーデン、アイルランドなどの国々に加えて、イギリスは「素晴らしい友人」として挙げられている。
全体的に、デンマーク人の回答者は、研究及び高等教育に関する安定的で拘束力のある協定をイギリスと締結することが有益だと述べているが、相互の権利と委任に基づかない協定はデンマークの利益にはならない。ある回答者は、「公式な協議を経ずに大国と締結された緩やかな協定は、ガラス店で象を飼っているようなものだ。」と述べ、また何人かは「27ヵ国で構成する欧州連合の一国としての立場をしっかりと維持し、選り好みをしないことがデンマークにとっての利益につながる。」と述べた。

 

*円表記はJSPSストックホルム研究連絡センターが追記

 

2018年7月7日

 

【出典】
University World News:Brexit risks for Danish higher education and research

地域 北欧・バルト三国、EU
イギリス、スウェーデン、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究、教育
国際交流 国際化