タイは、2036年までに国際的なヘルスケア・医療ハブになるという開発目標のもと、現在、ガンや遺伝子関連疾患など、より複雑な病気の治療の
ための精密医療を推進することで、次のレベルの医療およびウェルネスサービスを目指している。
このアクションプランでは、R&D と技能訓練技術の向上に重点が置かれており、タイ東部の チャチューンサオ、チョンブリ、ラヨーンの3県を網羅
する東部経済回廊(EEC)における最先端のイノベーション・R&D 施設から、現地の医療機器産業が恩恵を受けることも期待されている。
EEC は、タイのインダストリー4.0のパイロット経済特区として、スタートアップ・イノベーションセンター、国家品質のインフラ、トランス
レーショナルリサーチ(橋渡し研究)インフラなど、R&D とイノベーションの開発プロセス全体を促進する施設を備え、国が目標とするすべて
のハイテク産業を支援している。
この計画の基本となるプロジェクトの1つとして、保健省は、東南アジアを始めとした世界 各地の患者に臨床サービスを提供する施設として、
EEC へのタイ・ゲノムシークエンスセンター *1) の設立を求めている。計画されているゲノムシークエンスセンター *2) は、チョンブリ県の
ブラパー大学に設置され、広さ約1700平方メートルの研究室を持つ。この研究室では、5万人のタイ人を対象にしたゲノム配列の決定が行われ、
その DNA データは、医療システム研究所(HSRI)*3) の監督下で、ゲノミクスライブラリーの構築に利用される予定である。ゲノミクス
ライブラリーは、ASEAN 初の試みであり、データベースを活用することで、より効果的な医薬品・ヘルスケア製品の開発が可能になる。
必要な投資予算5000万米ドルのうち、半分はタイ政府が出資、残りは国内外の投資家が出資する予定である。地元の大手病院と企業が、多国籍
企業と提携し研究室を運営する共同事業体の設立に関心を示しており、現在、HSRI と EEC 事務局で入札手続きを実施している。
チュラロンコン王記念病院のゲノミクス・精密医療エクセレンスセンターは、ゲノム配列決定プロジェクト全体を支援、強化できることを保証している。
さらに、BOI と EEC 事務局は、EEC で働く外国の企業と専門家に、税および非課税の奨励措置を提供している。
ラヨーン県のスマートシティプロジェクトであるワンチャンバレーも、EEC の支援施設の一つである。ワンチャンバレーは、研究、開発、イノベー
ションの拠点として開発され、カムヌートウィット・サイエンス・アカデミー *4) の運営も行っている。カムヌートウィット・サイエンス・アカデミー
では、10、11、12歳の学生に奨学金を支給し、科学、数学、技術の分野で世界レベルの教育を行い、EEC および全国各地のハイテク産業に必要
な人材を育成している。
関連した開発では、タマサート大学 *5) が、チョンブリ県パタヤキャンパスにおいて、トータル・デジタル・ヘルスケア・ソリューションの開発
を計画している。この施設は、タイが地域の医療ハブになる上での競争力を高めることを目的としており、医療サービスのエクセレンスセンター、
デジタル病院、統合研究センター、地域に根ざしたヘルスケアソリューションを含む予定である。EECmd ビジョン2024のもと、EEC は国内外
の研究機関との知識の共有と ネットワーク化を進め、ヘルスケア分野の研究者と人材のスキルを向上させると共に、精密 医療と医療機器の
イノベーションの推進を目指している。
マヒドン大学は、ヘルステックに焦点を当て、エンジニアリング、バイオテクノロジー、ヘルスケア技術のための研究室と R&D スペースの包括的
なエコシステムを備えたサラヤー・スタートアップ・タウンを導入した。このプロジェクトでは、バイオメディカル・ロボティクス・テクノロジー
センター *6) 、ヘルスケア・ロジスティクス・ビッグデータ、UN イノベーション・ラボ、ロジスティクス・マネジメント・ヘルスケア・サプライチェーン・センターなど、エンジニアリング・イノベーションと高度な医療用ロボットのための作業スペースを提供し、スタートアップ企業とテクノ
ロジー・インキュベーションを支援している。
首都バンコクでは、約20の医療系学術機関と研究機関が「マルチセンター医療イノベーション臨床試験」プロジェクトのもと、研究およびヒト臨床
試験における協力関係を強化するための協定を結んでいる。「ヨーティー・メディカルイノベーション・ディストリクト」と呼ばれるネットワーク
を形成した機関で、携帯型胸部X線などの医療機器の開発や非感染性疾患の患者への応用などを共同で行ってきた。
*1) Thailand Board of Investment
*2) NSTDA
*3) HSRI
*4) KVIS
*5) thammasat
*6) BART LAB
Bangkok Post: PROMOTING MEDICAL TECHNOLOGY INNOVATIONS
地域 | アジア・オセアニア |
国 | タイ |
取組レベル | 政府レベルでの取組 |
行政機関、組織の運営 | 予算・財政 |
大学・研究機関の基本的役割 | 研究 |
社会との交流、産学官連携 | 産学官連携 |