【ニュース・イギリス】 保守党勝利後、英国の大学はEU離脱に直面

 
 2019年12月12日、高等教育専門雑誌のThe Higher Education (THE)は、前日に行なわれた英国総選挙の結果、保守党が大勝したことを
受けて、今後EU離脱が英国の大学にもたらす影響について発表した。

 
 保守党の大勝によりEU離脱が確実となり、資金の大幅な増加に伴う研究資金制度の再構築の可能性と、「質の低い学位課程」(※)が標的となること
が大学にとって大きな影響として予想される。

 
 資金面では、Augar reviewでの学費を7,500ポンドに引き下げるという提案は、保守党からの支持を得られなかった。しかし、保守党の新しい
票田となった地区は非高等教育者の多いEU離脱派地区であり、保守党はそれらの地区の地盤を固めるうえで、大学の資金調達に関して圧力を
かける可能性がある。

 
 保守党の公約では資金調達に関して率直な発言は避けており「Augar reviewは学費の程度、大学間の資金調達のバランス、継続教育やアプレン
タスシップ
や成人学習に関する思慮深いアドバイスであったので慎重に検討する。」というものであった。

 
 保守党の公約に掲げられたもので大きく変わる可能性があるものは、「成績インフレと低質な学位課程問題に取り組み、学部学生の願書や入学の方法
などを改善」
することである。

 
 「質の低い学位課程」が標的となるということは、卒業後の収入が低いと判断されたコースにおいて学生ローンの融資が制限され、
また低いローン返済率に伴い返済を大学に肩代わりさせることも考えられる。これらのアイディアは「隠れた学生定員枠の制限」と言われている。

 
 また保守党の公約では「大学における学術の自由と言論の自由を強化し、基準を引き上げることに引き続き焦点を当てる」とある。大学に
おける言論の自由に対する論争は、米国でも行われているように、大学の権利における焦点となってきている。

 
 英国の科学に関して、保守党の公約では「国内総生産支出におけるこれまでになく早急な増加を導入する。これには経済全体で研究開発に出資するGDPの2.4%を目標にする基礎科学研究も含まれている。」ということを繰り返し述べている。

 
 公約では首相の上級顧問であるDominic Cummings氏によって推し進められている以前の公約を繰り返し、「この新しい支出は政府に近いところ
で設けられる新しい機関で高リスクかつ高額の研究にあてる。」としている。また、研究者が申請書に費やす無駄な時間を節約する科学資金調達制度の改革
を同様に新たな公約として述べている。

 
 科学資金への産業戦略からのアプローチとCummings氏のアプローチとの間で、この政策分野の主要な争点の一つになる可能性がある。
大学側は、英国がEU離脱後に準会員として欧州連合の研究プログラムであるHorizon Europeに参加するかどうかという問題について保守党に
明確にしてもらうことを望んでいる。公約ではあからさまな表現は控えており、ただ「Horizon Europeも含めてEUとの科学研究は引き続き提携
をする」と表現している。
 

※質の低い学位課程:支払った学費に対して学生の満足度が低い、もしくは(大学の資金の出どころである)税金の納税者が期待するレベルに
 達していない学位
 


The Higher Education (THE): UK universities face up to Brexit after Tory election win

地域 西欧
イギリス
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育、研究、質の保証
統計、データ 統計・データ
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