国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)では、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco:UCSF)が行う、ヒトの胎児の組織を使用してヒトのような免疫システムを持つマウスを生成する、HIV治療薬開発目的の研究に年間200万ドルを助成してきたが、ワシントンポスト(Washington Post)紙は、2018年12月5日、同助成が中止されたと報じた。
同紙によると、NIH職員より、当該研究を行うUCSF研究者に対し、2013年に締結した研究助成契約(7年間)の解除について通達があったという。これに対し、NIH監督省庁である厚生省(Department of Health and Human Services:HHS)は否定するコメントを発表している。
一方で、中絶反対グループからの圧力を受けて、同省は、中絶手術で摘出されたヒトの胎児の組織を使用する連邦助成受給研究全てを対象としたレビューを2018年9月より実施している。また、NIHと同様に厚生省傘下にある食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)では、先進生物科学リソース社(Advanced Bioscience Resources Inc)との間で締結していた、ヒトの胎児の組織を使用してヒト化マウスを開発する研究契約を既に解除している。
ヒトの胎児の組織を使用する研究に対するNIH助成額は、2018年だけで1億300万ドルに上るとみられるが、スタンフォード大学(Stanford University、カリフォルニア州)に所属する免疫学者のアービン・ワイスマン(Irving Weissman)氏は、UCSFの研究が中止された場合、治療法やワクチンがまだ見つかっていない疾病の克服に向けた重要な取り組みが喪失されるとコメントしている。
NIHからUCSFに送付された書簡は、
https://www.sciencemag.org/sites/default/files/FOIA%20request%20-%20Dec%205%202018%20-%20Complete%20response.pdf[PDFファイル:212.97KB]からダウンロード可能。
2018年12月5日
Science:Report that NIH will cancel fetal tissue research contract fuels controversy
【ニュース・アメリカ】NIHが助成するヒトの胎児の組織を使用したHIV治療薬研究が中止されると報道
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