【ニュース・アメリカ】米国は科学技術分野における世界的リーダーであるものの、世界的にみるとその重要性は低下

 
米国科学財団(National Science Foundation:NSF)は2018年1月18日、NSFの政策決定機関である米国科学審議会(National Science Board:NSB)が、米国における科学・工学活動の現状をまとめた報告書「2018年科学・工学指標(Science & Engineering Indicators 2018)」を発表したことを明らかにした。
 
本報告書は、議会に義務付けられてNSBが2年毎に発表しているもので、2018年版報告書によると、米国は、科学技術(S&T)における世界的リーダーであるものの、中国を含む他国における活動拡大により、米国によるS&T活動が世界全体に占める割合は、低下傾向にあることが明らかにされた。
 
具体的には、米国は、

  1. 研究開発(R&D)活動に対する投資額が世界最高、
  2. ベンチャーキャピタル投資家にとって最も魅力的、
  3. 上級学位付与数が最多、
  4. ビジネス・金融・情報サービス提供の割合が最大、
  5. ハイテク製造業セクタにおける生産量が最大、

などが明らかにされている。
 
主な結果は以下の通り。

  • 2016年の米国によるR&D支出は年間4,960億ドルで、世界R&D支出の26%を占める。第2位は中国の4,080億ドル(21%)であるが、2000年以降の中国におけるR&D支出は年間平均18%増。
  • 2016年のベンチャーキャピタル投資額は、世界全体で総額1,300億ドル超。このうち700億ドル超は米国への投資。一方、中国への投資は340億ドルであるが、世界全体に占める割合は、2013年~2016年の間に5%から27%に増加し、増加率は最大。
  • 米国が提供するビジネス・金融・情報サービスは世界全体の31%を占め、第2位は欧州連合(European Union:EU)の21%。中国は第3位の17%であるが、増加率は年間19%で最大。
  • 米国のハイテク製造業生産量は世界の31%を占め、製品には航空機・宇宙船・半導体・コンピューター・医薬品・測定制御機器などを含む。第2位は中国の24%であるが、過去10年間で世界全体に占める割合は2倍以上増加。
  • 米国大学による科学工学(S&E)関連博士号付与数は世界最多の4万件で、中国(3万4,000件)、ロシア(1万9,000件)、ドイツ(1万5,000件)、英国(1万4,000件)、インド(1万3,000件)がこれに続く。但し、2014年に付与されたS&E学士号は世界で約750万件であったが、このうち25%はインドの大学が付与。中国(22%)、EU(12%)、米国(10%)がこれに続く。中国で付与される学位の約半数はS&E関連分野で、2000年以降のS&E関連学士号付与数は300%増。
  • 米国における主要R&D活動実施者はビジネスセクタで、2015年のR&D支出総額4,950億ドルの72%はビジネスセクタによるもの。また、R&D投資額もビジネスセクタが全体の67%を占める。
  • 2016年に発表されたS&E関連論文において、国際協力研究の割合が最も高いのは英国の57%で、フランス(55%)、ドイツ(51%)がこれに続く。米国による国際協力率は37%で、2006年から12ポイント増。

 
なお、本報告書は、「2018 SCIENCE & ENGINEERING INDICATORS」(PDF:17.47MB)からダウンロード可能。
 
2018年1月18日
 
National Science Foundation:State of US science enterprise report shows US leads in S&E as China rapidly advances
 

地域 北米
アメリカ
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