【ニュース・アメリカ】民族学講座、大学生の成功に貢献するとの報告書

サンフランシスコ州立大学(San Francisco State University、カリフォルニア州)は民族学講座を受講し、1クラスだけでも合格した学生は、大学における全般的な成績が向上するとのデータ評価結果をまとめた報告書「民族学は大学生の成功に貢献(Ethnic Studies Contributes to College Students’ Success)」を発表した。

 

これによると、2010年の調査で、民族学専攻学生が入学後6年以内に卒業した割合は77.3%で、そうでない学生の52.3%を大きく上回ったことが明らかにされた他、民族学講座を少なくとも1クラス受講した学生は、受講していない学生よりも卒業率が高いことが明らかにされた。

 

本報告書を執筆した同大学セザール・チャベス研究所(César Chávez Institute)ディレクター代行で元民族学部長のケン・モンテイロ(Ken Monteiro)氏は、民族学専攻学生が他分野専攻学生よりも成功している理由として、民族学教員が

他分野の教員と比較して、学生指導や補講により多くの時間を費やすこと、
学生に直接関連する情報を提供すると共に、関連しない情報をいかに自身と関連付けるかを教えていること、
異なる視点から物事を見ることができるよう学生に批判的思考を教えていること、

の3点を挙げた。

 

これに対し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles:UCLA)物理学・天文学教授のマット・マルカン(Matt Malkan)氏は、民族学は物理学などといった他の専用分野と比較すると難易度が低いためとして、懐疑的な見解を表明している。

 

しかし、モンテイロ氏は民族学講座では学生が自身のアイデンティティを攻撃される脅威を感じることのない環境で学ぶことができ、学生を保護する役割を果たしているとし、これに関しては、スタンフォード大学(Stanford University、カリフォルニア州)教育政策分析センター(Center for Education Policy Analysis)ディレクターで教授のトーマス・ディー(Thomas Dee)氏も、例えば、男子学生が圧倒的に多い難易度の高い理数系講座で性別による偏見を感じる女子学生は、十分に能力を発揮できない可能性があるとしている。ディー氏は固定観念に対する恐怖の制限や学生支援サービスの提供などといった、民族学講座で導入されている介入策は、他の専攻分野においても学生支援のために適用可能としている。

 

なお、本報告書は、以下よりダウンロード可能。
Inside Higher ED:Ethnic Studies Contributes to College Students’ Success

 

2018年7月9日

 

Inside Higher ED:The Benefits of Ethnic Studies Courses

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
人材育成 学生の多様性