米国研究所(American Institutes of Research:AIR)は2017年1月4日、大学による非常勤教員への依存拡大に伴って節約された教育指導人件費が何に投入されているかを調査した2つの報告書を発表した。1つ目の報告書「パートタイム及び非常勤教員と大学の支出との間の関係(The Relationship Between Part-Time and Contingent Faculty and Institutional Spending)」では、非常勤教員の多用によって節約された教育指導人件費は、テニュアトラック教員に対する更なる投資ではなく、主に他の用途に使用されていることが明らかにされた。主要な結果は以下の通り。
- 非テニュアトラック教員の割合の高い私立4年制大学は、そうでない大学と比較すると、フルタイム教員の人件費を37%節約。しかし、全カテゴリーのフルタイム職員で比較すると、人件費節約は19%に留まることから、教育指導人件費節約分は管理職人件費に投入されていると分析。公立4年制大学でも同様の傾向はあるが、格差は24%と14%。
- 公立4年制大学は、非常勤教員への依存拡大による教育指導人件費節約分を、維持管理、管理職、及び、学生サービス職員などの分野で利用。具体的には、学生募集、入学手続、カウンセリング、学生自治会、運動競技など。
- コミュニティカレッジ及び私立4年制大学は、教育指導人件費節約分を他の用途に使用することは少ない傾向。
また、2つ目の報告書「大学における人材の移行 ~非常勤教員はどこにいるのか?~(The Shifting Academic Workforce: Where Are the Contingent Faculty?)」は、非常勤教員依存拡大に関するデータを提供している。2003年~2013年の間での非テニュアトラック教員の割合の推移は以下の通り。
- 学士課程を擁する公立4年制大学では45%から62%に増加。
- 学士課程を擁する私立4年制大学では52%から60%に増加。
- 公立研究大学では44%から50%に増加。
- コミュニティカレッジでは80%から83%に増加。
なお、各報告書は、以下よりダウンロード可能。
American Institutes for Research:
The Relationship Between Part-Time Contingent Faculty and Institutional Spending(「パートタイム及び非常勤教員と大学の支出との間の関係」)[PDF:678.3KB]
The Shifting Academic Workforce:Where Are the Contingent Faculty?(大学における人材の移行 ~非常勤教員はどこにいるのか?~)[PDF:592.3KB]
Inside Higher ED:When Colleges Rely on Adjuncts, Where Does the Money Go?