【CGSIレポート】Scopus収録論文における科研費成果論文の分析結果

【概要】
学術研究は、人文学・社会科学から自然科学までの全ての分野をカバーして行われ、そこから生まれる成果は多様である。このため、成果を一律の基準で定量的に評価することは容易ではなく、また、評価したとしても、多様な学術研究の限られた側面のみを見るに留まることも事実である。一方、学術論文は多くの研究分野の研究者にとって研究成果を発表する極めて重要な手段であり、それが多くの他の研究者に読まれ、また、引用されることはその研究の価値を測る上でのひとつの指標ともなり得る。
センターではその業務の一環として、今回エルゼビア社の文献データベースScopusを用いて、研究者の自由な発想に基づいて行われる学術研究を支援する最大の競争的資金である科学研究費助成事業(以下「科研費」という。)により助成された研究成果の論文の被引用状況についての分析を行った。
科研費による支援を受けた研究代表者は、毎年度、研究実績報告書を提出し、また、研究期間科研費による支援を受けた研究代表者は、毎年度、研究実績報告書を提出し、また、研究期間終了後には研究成果報告書を提出する。これらの報告書には、科研費の研究成果として出版された論文等が記載されている。そして、これらのデータは、国立情報学研究所が作成・公開しているデータベース「KAKEN」において公表されている。
センターでは、エルゼビア社にこのKAKENに収録された文献情報と同社のScopusに収録された文献情報のマッチング、及びマッチングした文献情報のうち、指定した項目による取りまとめを委託した。Scopusは、エルゼビア社が作成・保有する世界最大級の学術文献データベースで、科学・技術・医学・社会科学・人文科学の各分野にわたる世界5,000 社以上の出版社の21,000 誌以上(平成26 年5 月現在)のジャーナルに掲載された論文等の情報を収録している。エルゼビア社は、収録の対象とするジャーナル等の選定は外部の専門家集団によるコンテンツ選定・諮問委員会を設置し、同社の収録ポリシーに基づき行っている。収録誌は大半が英文誌であり、出版者の国別で見ても欧米諸国が中心で、我が国で出版されたジャーナルで収録された数は800 誌に満たない。従って、本レポートに記された分析結果は、科研費の成果のうち日本語でまとめられたものは含まず、Scopusに収録された英語論文という限定的なデータに基づくことに注意が必要である。
なお、このような学術文献データベースは、Scopus の他にトムソン・ロイター社が作成・保有するWeb of Science(以下「WoS」という)がある。WoS にはScience Citation Index をはじめとする6 つのデータベースが含まれており、その収録ジャーナル数は計約12,000 誌である。これまで、WoS を用いた我が国の論文を通した学術研究活動の分析はいくつか行われているが、本分析においてはできるだけ科研費による成果の全体像を把握するために、収録対象のジャーナル数の多いScopus を用いた。
本レポートでは、このKAKENとScopusのマッチング論文のデータについて、被引用数やトップ10%論文割合等の項目を、科研費の種目別、年齢別といった観点から、マッチングしなかった論文との比較を含めた分析を行った4。なお、一般に研究成果が論文として出版されるまでには一定の時間を要するため、科研費の成果論文がその研究期間終了後に出版されることもある。しかし、KAKEN には研究実績報告書提出の後に受理または出版された論文は含まれていないため、これらの論文は分析の対象となって
いないことに注意が必要である。
KAKEN とScopus のマッチングの手順は巻末の「備考」において説明したが、このマッチングは完全ではなく、例えば科研費による成果として挙げられ、Scopus に収録されている論文数にはある程度の誤差があり、本レポートの分析もそうしたデータに基づいていることを予め承知いただきたい。

なお、レポート全文はこちら(PDF)から閲覧可能。

(グローバル学術情報センター(CGSI))

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