【海外センターレポート・ブラジル】学部生の研究・学術活動への奨学金給付プログラムについて

科学技術イノベーション通信省(MCTIC)関連機関の戦略的管理・研究センター(CGEE)による、「科学・技術・イノベーション分野の人材育成:国家科学技術開発審議会(CNPq)による学部生の研究・学術活動への奨学金給付プログラム(PIBIC)の評価」と題した調査結果が、去る2017年4月25日に発表されました。* その結果、学部生の研究・学術活動への奨学金の件数は、2001年から2013年までの大学入学者の総数とともに拡大を示したことが分かりました。調査では、奨学金件数は近年の大学及びその入学者数の増加に追いついていない状況ではあるものの、この奨学金プログラムにより学生の研究・学術活動の質が向上したことが指摘されています。

 

CNPqがこのPIBICの制度を確立したのは1980年代のことで、高等教育機関と調査研究機関を連携させる革新的なプログラムとなりました。以降、各大学を通じて学部生向けの学術・研究活動の奨学金が散発的に給付されるようになり、徐々にその規模を拡大してきました。現在、給付されている奨学金件数は21,661件に上ります。

 

この調査は、2013年時点で奨学金給付を受けていた学生とその指導教官のみを対象として行われました。オンライン上で、学生・指導教官向けにプログラムを評価する質問票が用意され、その中で20,500人の学生、27,200人の指導教官が質問票に回答し、学生と指導教官の両側からの評価が得られました。

 

調査では、給付件数のみにとどまらず、その影響・成果についても評価され、給付を受けた学生は、良好な成績を収める、より高収入の仕事に就く、修士課程や博士課程により早く入学し、修了する等の好影響があることが明らかになりました。CGEEのマリアノ・レプラネ理事長は、「技術的な知識の習得だけでなく、学術研究に実際に取り組むという経験を通じて、学生は学術活動の複雑さ、困難に直面し、それを乗り越えることを学びます。それにより、将来就く仕事において必要となる、問題解決のための創造力やきめ細やかな方法論を身に着けることができます。そのための投資が、月400レアルという金額です」とコメントしています。

 

また、調査では、給付を受けた学生は修士課程修了までの期間が短いという結果も出ました。奨学金の最終給付を受けてから3年未満で修士課程を修了する学生の数は、4年から5年かけて修了する学生の数に比べ、全体的に増加しました。また、学生が奨学金の給付を受ける期間が修士課程修了と大きく関連しており、給付が短期間である場合、学生の修士・博士課程への進学や、研究者の道に進む意欲を高める等の効果は必ずしも得られないようです。かつて給付を受けた学生のうち修士課程を修了した学生数、博士課程を修了した学生数はそれぞれ、給付しなかった学生に比べ2.2倍、1.5倍という結果でした。

 

さらに、給付を受けた学生は、受けていない学生よりも学部の修了から修士課程に入学するまでの期間が短いという結果も出ました。UNESP(サンパウロ州立大学)の奨学金受給生の場合、その過半数を超える65%が、学部修了後1年以内に修士課程に入学しています。学部修了後1年以内に修正課程に入学する確率は、給付を受けた学生と受けなかった学生の間で9.4ポイント異なりました。

 

この奨学金プログラムにより、奨学生と研究者の双方に恩恵をもたらす好循環が生まれ、ブラジルにおける学術研究の素養を有する高度人材の育成、科学・技術の発展、イノベーションに関する政策上で重要なものであるといえます。したがって、このプログラムがブラジル国民により良い生活条件をもたらす、希望ある未来の建設の戦略において欠かせない要素となることは間違いありません。

 

サンパウロ海外アドバイザー 二宮 正人

 

* 調査報告書(全体)は以下より閲覧可能。
Centro de Gestão e Estudos Estratégicos(CGEE):A Formação de Novos Quadros para CT&I Avaliação do Programa Institucional de Bolsas de Iniciação Científica-Pibic[PDF:1.54MB]

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