【国際協力員レポート・中国】中国における研究交流促進に向けて-理系分野の日中研究者の視点から-

【概要】
中国は1978年の鄧小平による改革開放以降、大学の国際化に積極的に取り組むようになった。また、中国における大学の国際化は、経済発展にともない日々その重要性が高まっている。そして、経済発展を促進する一案としても、大学の国際化は重要な役割を担っているといえる。中国政府は、世界一流の大学構築のため、1993年に「211プロジェクト」、1998年に「985プロジェクト」を始動した。これらのプロジェクトに認定された大学の国際化を集中的に支援するとともに、その大学に所属する教員及び学生の国際的研究活動も推進している。優秀な人材を海外に送り出すのみにとどまらず、同時に海外の研究者及び学生を中国へ積極的に受け入れ、高度な人材を中国国内にとどまらせる政策も次々と打ち出している。このように、中国政府は自国の高等教育レベルを高める政策を増やし、トムソン・ロイター(Thomson Reuters)が提供する世界の大学ランキング2014-2015年に2大学;48位北京大学、49位清華大学をランクインさせた。日本の東京大学はこれら2大学よりも上位である23位を2年連続で保ってはいるものの、50位以内にその他日本の大学はランクインしていない。実際に中国で暮らし、中国の大学国際化の話を聞くにつけ、研究者は世界の大学ランキングを上げることをこそ目標としている様にも見え、また、中国人研究者の論文生産数の推移をみていると日本に追いつく日もそう遠くないように感じられる。
これらの現象について、日本の政府機関及び大学関係者は、ある一定の危機感を持っているものの、勢いのある中国と積極的に連携して研究交流を行い、世界へ研究成果を発信していこうと考えている研究者は少ないように感じる。その理由として、中国と研究交流を行うことの具体的なメリットを見出せていないからではないかと考える。日本のマスメディアからは、毎日のように反日運動、情報統制、密輸、PM2.5等中国に関するネガティブ報道が行われ、中には中国の本質を知るにはほど遠い内容さえある。このような研究に関すること以外の要素も、研究交流に対してもネガティブなイメージを植え付ける一因になっているのではないかと考える。
本研修では、大学の国際化に大きく寄与できる活動としての日中研究交流の促進に焦点を当て、現状の分析と今後の方向について検討を行うことを目的とした。以下では、まず近年の中国人研究者の国際化に関する中国の政策をみる。次に、SCI論文数や国際共著論文数から中国人研究者の研究力について考える。その上で、実際に長きにわたり日中研究交流を行っている4名の日中大学研究者のインタビューから中国と日本が研究交流を行うことで得られる成果について検討を行い、今後の日中研究交流の促進について考察する。

なお、報告書全文はこちら(PDF)から閲覧可能。

【氏名】 中山 尚子
【所属】 神戸大学
【派遣年度】 2014年度
【派遣先海外研究連絡センター】 北京研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
国際交流 国際化、研究者交流
レポート 国際協力員