【国際協力員レポート・中国】中国における産学研連携活動の実態-関係9機関からのヒアリングを通して-

筆者は(独)日本学術振興会(以下、JSPS)の国際学術交流研修により、2016年4月から北京研究連絡センターに勤務している。その事前研修として、2015年11月中国国内のJSPSの支援プログラムを受けたことのある研究者が集まるJSPS同窓会総会に出席し、研究者との交流の中で、浙江大学薬学院の威建華教授の話を伺う機会があった。威教授は名古屋大学において博士号を取得し、同大学で2007年までポスドクとして研究を行っている。その後、浙江大学での研究の傍ら、ナンキン豆の渋皮から抗酸化作用のある物質を抽出してサプリメントを生成し、日本の製薬会社と協力を試みている。 威教授は、「日本ではナンキン豆の渋皮に抗酸化作用があることは昔から知られていたが、栄養素を凝縮し 、錠剤や飲料の形にする発想はなかった。その点に注目した私は栄養補助食品として商品化を行った。中国市場での需要も年々増加している。」とのエピソードを語ってくださった。それは筆者が初めて目の当たりにした、中国の産学研連携で創出された研究成果の実用化であった。
近年の中国は急速な経済成長を遂げ、2020年代にはアメリカをも超えて、世界第一位の経済大国になるという見方もある。筆者が実際に生活し中国の大学の状況を見聞きした中で、総じて言えることは、研究者、学生、そして事務担当スタッフをはじめ、中国人は何に対してもパワーがあることだ。中国政府による巨額の大学研究支援プログラムを背景に、臆するところがないといっても過言ではない。中国の大学の収入において大きく寄与しているとされる産学研連携に関しては、様々な報告がなされているが、実際に目に見える連携にはどのようなものがあるのだろうか、日本と比べて大学での実施体制に相違はあるのだろうか。こうした疑問を基に、本研修報告書を作成した。
本稿では、まず中国の産学研連携に関する政府支援策の背景、経緯と現状をみる。次にその支援策の成果について大学の知的財産と大学発ベンチャーの2つの面から考察する。そのため、実際に2校の大学の科学技術部(日本の大学では産学連携本部や研究開発推進部に相当)の担当者から大学の公式見解を得るとともに、中国の大学教授かつ中国企業を経営する取締役1名、企業との連携に携わる中国の大学・研究機関の研究者4名、そして大学との連携に携わる企業2名、計9名からのヒアリングを行い、その回答を基に中国の産学研連携における現状及び今後の課題を把握するとともに、将来の方向性を考察する。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。

【氏名】 橋本 真里
【所属】 名古屋大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 北京研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
中国
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
国際交流 国際化、研究者交流
人材育成 研究人材の多様性
社会との交流、産学官連携 産学官連携
統計、データ 統計・データ
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