【国際協力員レポート・フランス】欧州高等教育改革とフランスの大学

【概要】
2004年の国立大学法人化に象徴されるように、日本の大学を取り巻く環境は大きく変化し、各大学は生き残りをかけた厳しい自己変革が求められている。18歳人口減少による大学全入時代の到来、規制緩和による大学の新設ラッシュ、そしてグローバル化による国際競争は、「教育の質の保証」という新たな問題を提起しながら大学の自律性と個性化を促している。
高等教育を取り巻くこのような状況は世界的な傾向でありフランスも例外ではない。1998年のソルボンヌ宣言、1999年のボローニャ宣言に始まるボローニャ・プロセスに呼応して、フランスでは数々の大学改革が推進された。ヨーロッパの高等教育における基礎構造の標準化として、半期(セメスター)制度、欧州単位互換制度(ECTS)が導入され、学生の流動性向上のためのカリキュラムが整備された。2002年には学部課程と大学院課程に分ける2サイクル制としてLMD制(Licence (学士)、Master (修士)、Doctorat (博士)で構成)を採用、2006年までに全大学で導入された。サルコジ政権下の2007年には「大学の自由と責任に関する法律(LRU)」が制定され、大学競争力の強化、学長権限の強化、自由裁量の拡大が推進された。国際化に関していえば、日本と同様の非英語圏であり伝統的にフランス語の保護に力を入れてきたフランスであるが、現在フランスの高等教育機関では留学生獲得のために700もの英語プログラムが用意されている。
2010年までの欧州高等教育圏の創設という壮大な目標を掲げたボローニャ・プロセスは、わずか10年では完遂されず、その目標達成期限は2020年に延長された。2012年にブカレストで行われた欧州高等教育大臣会合では、とりわけ欧州高等教育圏における流動性の向上を優先すべき課題のひとつに据え、2020年までに欧州の学生の20%のモビリティを達成するという目標が掲げられている。ボローニャ・プロセスは国境を越えた高等教育圏創設の世界に先駆けたモデルとして注目され、日本においてもその内容を紹介する論文は数多く存在するが、実際に高等教育機関で働く教員・研究者がボローニャ・プロセスとそれに呼応する一連の高等教育改革をどのように受け止めて評価しているのか、その視点から論じた研究は多くない。本論文では、フランスの大学や研究機関で働く教員、研究者へのインタビューおよびアンケート調査を通じて直接の声を聞くことで、日本における高等教育改革への示唆を導き出したい。

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【氏名】 櫻井 瑠衣
【所属】 横浜国立大学
【派遣年度】 2014年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ストラスブール研究連絡センター

地域 EU、中東・アフリカ
フランス
取組レベル 国際機関レベルの取組、政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
国際交流 国際化、学生交流、研究者交流
レポート 国際協力員