【概要】
筆者は平成24年2月から平成26年3月までの間、日本学術振興会人材育成事業部海外派遣事業課にて、「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」(以下組織派遣プログラムという)を担当した。平成21年度から始まったこのプログラムでは、国内の大学・研究機関等39機関、96課題が採択され、事業期間であった約3年3か月の間に、114か国に延べ10,048人の学部生、大学院生、ポスドク、助教、講師等の若手研究者を海外に派遣する結果となった。
組織派遣プログラムが設置された主な理由としては、学生や若手研究者の日本から海外への派遣者数がピーク時の半数以下にまで減少しているという文部科学省(以下MEXTという)の調査等を受けて、若手研究者の海外派遣を組織的に後押しし、今後の学生や若手研究者の海外派遣支援に繋げるためのきっかけとするためであった。このプログラムの大きな特徴として挙げられるのは、学部生も支援対象であったこと、組織的に海外派遣を行うことを目的とするため、テーマ設定によっては複数の研究科にまたがって学生や若手研究者を派遣することができたことである。
平成21年度補正予算によって時限付きで設置されたため、平成24年度をもって組織派遣プログラムは事業を終了したが、プログラムを担当する中で採択事業の担当教員や派遣された若手研究者等の意見を聞く機会があり、このプログラムをきっかけに、他の研究科と協力して海外派遣をする体制を作ることができた(教員意見)、短期間の海外派遣をきっかけに次の長期留学に向けての準備ができた(派遣者意見)、といった声を聞くことができた。
このような経験を通して、筆者は組織単位で学生や若手研究者を海外に派遣する支援体制に興味を持つようになった。国際協力員として派遣されたボン研究連絡センターの業務の中で、ドイツの高等教育や学術情報に触れ、ヨーロッパにおいてエラスムス計画という学生の留学や教員の海外留学・研修のための支援プログラムがあり、またそれが25年以上もの長い歴史を持つことを知り、エラスムスの内容や支援体制について調べてみようと思ったことが本報告書の動機である。本報告書ではエラスムス計画の全体像を把握するとともに、特にドイツにおけるエラスムス計画の状況や成果を、統計や担当者へのインタビューにより考察する。また、ひいては、エラスムス計画を参考にして、日本における学生や若手研究者への海外派遣支援に示唆を受ける点があるか考えてみたい。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 田尾 若菜
【所属】 広島大学
【派遣年度】 2015年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ボン研究連絡センター