【国際協力員レポート・タイ】タイの大学のインターナショナルプログラム-非英語圏におけるインターナショナルプログラムの課題と展望-

【概要】
我が国では2009年から2013年の間に文部科学省の補助事業として実施されたグローバル30を契機に同事業に採択された13大学を中心に英語による授業のみで学位が取得可能なインターナショナルプログラム が急増した。
グローバル30事業の総括として2014年2月14日に行われたシンポジウム「国際化で大学は変わったか」において文部科学省高等教育局高等教育企画課、有賀理国際企画室長はグローバル30実施により明らかとなった日本の大学の教育の国際化における課題を、「外的環境の変化に応じ継続的に変革できる体制」、「学内全体・学外への一層の波及」、「国際標準への適合と差別化」、および「日本人学生・留学生に提供する価値の向上」と指摘した 。
このような課題を踏まえ、また2014年度から始まった採択件数も実施期間もグローバル30よりも拡大した「スーパーグローバル大学創世支援」も後押しし、日本の大学におけるインターナショナルプログラムは内容及び制度の見直し・改善と設置数の拡大が加速していくことが予想される。
一方タイにおいては、マヒドン大学が1986年に国公立大学で初めてインターナショナルカレッジを設置し、インターナショナルプログラムはすでに30年近く実施されてきた。現在では多くの大学が学部・大学院両方で文系理系ともに幅広い分野のプログラムを提供している。
2015年にASEAN経済共同体が発足し、域内の関税撤廃、サービス分野の自由化が進み、人やモノの移動が活発になるが、高等教育もこの影響を受け大学の研究者や学生の流動が活発となり、域内で快適な研究環境を提供し、また質の高い教育を提供する大学により優秀な研究者や学生が集まるようになると予測されている。これを機にタイ教育省はタイの大学がASEANの教育ハブとなることを目指すと宣言しており、その基盤整備として国際標準に合わせた教育制度の改変が進んでいる。
タイ教育省は2012年にタイの大学に対してアカデミックカレンダーを国際標準に合わせて1学期を8月から12月、2学期を1月から5月とするよう求め 、2014年より多くの大学で導入された。さらにタイ教育省は、教育の質保証、学位認定、学習成果、単位互換、学生及び教員の交流プログラムにおいてASEAN域内で高等教育の統一が重要だと唱えている 。
こうしたASEAN域内の高等教育連携が進むにつれ、今後タイのインターナショナルプログラムは、域内の学生交流のプラットフォームとしてプログラムが発展することも推測できる。しかし、非英語圏であるタイにおいてインターナショナルプログラムを幅広く展開する上で大学は様々な課題を抱えているのではないか。
本稿では英語による授業がより難しいと考えられる学士課程に主眼をおき、タイの大学におけるインターナショナルプログラムの取り組み状況について調査を行った。第2章では調査方法と調査対象を説明する。第3章ではこの調査に基づき「組織」、「教育」、「学生」、「教職員」、「大学の国際化への影響」の5つの観点からプログラムの現状を整理し課題を考察する。第4章ではこれをふまえ、タイの事例から非英語圏におけるインターナショナルプログラムの課題と展望をまとめる。

なお、報告書全文はこちら(PDF)から閲覧可能。

【氏名】 轟 裕美
【所属】 九州大学
【派遣年度】 2014年度
【派遣先海外研究連絡センター】 バンコク研究連絡センター

地域 アジア・オセアニア
タイ、その他の国・地域
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化、研究者交流
レポート 国際協力員