【国際協力員レポート・スウェーデン】日本とスウェーデンにおける高等教育の現状と課題-博士号を取り巻く環境-

日本では近年、大学院、特に博士課程への進学者数が減少している。それに伴い博士号取得者が減り、日本の科学技術を支える研究人材が減り始めている。しかし欧米諸国では依然として博士号取得者が増加している。特にスウェーデンをはじめとする北欧諸国では、安定して高い取得率を維持している。それを裏付けるかのように、筆者がストックホルム研究連絡センターに着任して以来、現地の大学の国際部門担当者や学術助成機関担当者等、研究者以外のスタッフにも博士号取得者が多いことに、非常に驚いた。科学技術・学術政策研究所の発表によると、日本の研究開発費は主要国(日米独仏英中韓の7カ国)中第3位の規模であるが、人口100万人当たりの博士号取得者は主要国中6位まで下がる。なぜ日本の博士号取得者は少ないのか。なぜ日本人学生は大学院、とりわけ博士課程へ進学しなくなっているのか。なぜ欧米諸国における博士号取得者は高い水準を維持しているのか。この疑問を解決するべく、各国における博士号を取り巻く環境に違いがあるのではないかと仮説を立てた。国の高等教育プロセス、背景となる社会制度、博士号取得者の雇用状況の違い等が、博士号取得を目指すモチベーションに影響を与えているところが大きいのではないだろうか。これらを正しく把握するため、日本とスウェーデン双方の高等教育及び博士号について調査・分析し、考察を行うこととする。執筆にあたり、日本及びスウェーデンの統計データに加え、筆者がスウェーデンでの1年間の研修を通して、各対応機関の担当者から提供いただいた情報及びJSPSフェローシップ事業経験者等との対話を通して得た情報を盛り込んでいる。
第二章以降では、日本とスウェーデンにおける高等教育の仕組み、博士号取得者数及び高等教育進学者の構成比、高等教育卒業者の雇用状況、国の支援体制、の4項目を調査分析し、日本の高等教育の課題を考察する。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 山下 史恵
【所属】 北海道大学
【派遣年度】 2017年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ストックホルム研究連絡センター

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
人材育成 研究者の雇用、研究人材の多様性
統計、データ 統計・データ
レポート 国際協力員