【国際協力員レポート・アメリカ】米国大学におけるInstitutional Research(IR)

近年、日本では大学におけるInstitutional Research(以下IR)が注目されている。2012年に国公私立大学783校を対象に実施された文部科学省先導的大学改革推進委託事業『大学におけるIRの現状とあり方に関する調査研究』(東京大学)の調査結果を参照すると、IR組織の設置状況について、「IR名称の組織がある」(9.9%)と「IR名称はないが、担当組織がある」(15.4%)は合わせて全体の約25%となっている。「全学レベルの組織がない」割合は69.1%を占めているが、IR組織を設置していない大学のうち、設置に関して、「検討中」が36.1%となっており、IR組織の設置が計画の中に組み込まれつつあることがうかがえる。その関心の高さは、『IDE現代の高等教育No.586・12月号』や『IDE現代の高等教育No.528・2-3月号』など、教育関係書籍で特集されていることにも見受けられる。
IRはもともとアメリカの大学で1960年代から発展したものであるが、日本の大学においてもIR活動の実践への取り組みも散見されるようになった。しかしながら、大学におけるIRとは何かについては、その最初の創設国であるアメリカ合衆国でも、様々な定義があり、実践活動も多様である。このことが、日本において、教育政策関係者や大学関係者間でIRについて、共通の理解がなく、混乱が生じている原因になっている。
2016年2月に中央教育審議会・大学教育部会によってまとめられた『大学運営の一層の改善・充実のための方策について』では、「大学運営の高度化に伴い新たに必要となる専門的業務を担う体制の整備」の中で、社会の変化の中で大学運営の高度化を図っていくための具体例として、IRにおける教員、事務職員の垣根を越えた専門的な取り組みが必要であることが述べられている。しかし日本の大学には、このような専門性をもったスタッフはあまりいない。教員は教育・研究を中心としており、実務的なIR活動とりわけ自大学のIR活動に参加している例は少ない。他方、職員は、司書や経理などを除けば、数年で異動する例が多く、専門性を持った専門職スタッフは、これまであまり重要と考えられてこなかったし、その育成もされてきていない。このため、IR担当者(IRer)をどのように雇用し、育成するかは大きな課題となっている。また、多くの大学では、こうした専門性を持ったスタッフを外部資金によって雇用している。このため、身分が不安定で、IR活動の安定性や継続性に問題がある。
本報告書では、米国と日本の大学におけるIRの現状の文献調査、米国の大学・関係機関、研究者へのインタビューを通して、日本の大学におけるIR活動向上、特にIR担当者(IRer)の人材確保・育成に関する考察を述べることを目的とする。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 高橋 宏輔
【所属】 島根大学
【派遣年度】 2017年度
【派遣先海外研究連絡センター】 サンフランシスコ研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育、質の保証
国際交流 国際化
人材育成 若手研究者育成、職員の養成・確保、高技能職業人材の育成
レポート 国際協力員