【国際協力員レポート・アメリカ】米国の科学技術政策形成過程における科学者コミュニティの役割-アメリカ科学振興協会の事例から-

米国は第二次世界大戦以降一貫して世界の科学技術のトップを走り続けてきたが、グローバル競争の激化、新興国の台頭もあり、国家政策においても科学技術イノベーションが成長政策の中心に位置づけられている。オバマ政権では、米国イノベーション戦略を発表し(2009年発表、2015年10月改訂)、持続的な経済成長と質の高い雇用の創出を目標とし、その基盤としてイノベーションと研究開発投資を重視してきた。国内においてはSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育による人材育成を強化し、国外からはハイスキル人材を受け入れ米国経済に貢献できるような移民システムの再構築を行うことを掲げている。
とはいえ米国は依然として科学技術の超大国であり、世界をリードする存在であることに変わりはない。例えば各国の研究開発に係る総支出(Gross Domestic Spending on Research and Development)を金額ベースで比較したとき 、近年、中国の急激な追い上げが見られるものの、依然として1位である。潤沢な資金に加え、国際競争力の高い研究大学、企業等の存在等、環境的豊かさを強みとし、政策的にハイレベルな外国人を流入させることで、研究者、技術者、留学生など、国外から多くの優秀な人材が常に集まり続けている。その成果として、主要国の論文件数においても、同様に中国が追い上げており、世界の論文総件数におけるシェアは低下しているものの1位を維持し続けている。極めつけは自然科学系のノーベル賞受賞者数で、2015年までに合計251名にのぼり、2位のイギリス(78名)の3倍以上の受賞者を輩出しており、2001年以降もその勢いは衰えていない。
米国の科学技術の強みは一体どこにあるのか。その一つとして、アメリカの科学技術政策はその予算が他国より潤沢であるというだけでなく、最大限有効な政策効果を生む政策システム、即ち広く情報を集約かつ分析して政策を立案し、立案した政策をトップダウンで迅速かつ大胆に展開する制度設計が組み込まれている、と評されている 。そこに、アメリカの政策形成過程の特徴としてみられる多様なアクターの参加、この場合科学技術政策に関連のある団体の積極的な政策形成過程へ関与が米国の科学技術政策をより充実・強化している。
本報告書では、米国の政策形成過程の中で、どのようにして各種の情報が組み込まれていくか、特に科学者コミュニティがどのような役割を果たしているかについて、米国内だけではなく世界的にも影響力のある学術総合雑誌『Science』誌の発行元であるアメリカ科学振興協会の事例を元に調査したい。

なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。

【氏名】 村山 依利紗
【所属】 琉球大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ワシントン研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 研究
国際交流 研究者交流
人材育成 若手研究者育成、研究人材の多様性
統計、データ 統計・データ
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