【国際協力員レポート・アメリカ】米国におけるポスドク研究者の就職支援の現状

日本において、大学院で博士号を取得した者が、大学等の研究機関で常勤職の教員となり、教授を目指すことが、最も一般的な進路として考えられてきた。しかし、時代の流れとともに、博士号取得者が、ポスドクの期間を何年過ごしても、常勤職の教員になるチャンスが巡ってこないという問題が顕在化している状況にある。
博士課程修了者数の動態に関する歴史を振り返ると、博士課程修了後に常勤職に就けない問題は、以前から存在していて、昭和50年代にオーバードクター問題の解決をめざす若手研究者団体連絡会(OD問題連絡会)により作成された「オーバードクター問題の解決をめざして」と題したパンフレット等の一連の活動により表面化された「オーバードクター問題」がある。その後、平成8年度から平成12年度までの5年間の科学技術政策を策定する上での指針となった第一期科学技術基本計画の中で「ポストドクター等1万人支援計画」が提言され、ポスドクの数が急増する中で、常勤職ポストが依然限定的なものであることによる不均衡が生じることとなり、現在の「ポストドクター問題」に至っている 。
こうした状況の中、文部科学省が平成28年度より卓越研究員事業を開始する運びとなった。この事業は、文部科学省又は日本学術振興会が、卓越研究員の受入れを希望する研究機関のポストを一覧化し公開することと並行して、若手研究者を対象に募集を募り、日本学術振興会によるピアレビューを実施し、優れた若手研究者の選定を行う。受入れを希望する研究機関と採択候補者との間で、当事者間での交渉が行われた結果、ポストを得た場合に、卓越研究員として決定される。これらの流れの中で、若手研究者が新たなキャリアパスを構築することを目的とした事業である 。これまで博士号を取得した研究者は、大学等の公的研究機関に配属されることが一般的であり、一度そのような研究機関に配属されると、企業等に転職する機会が極端に低下する傾向にある。この事業が普及することにより、産学官のセクター間を越えた研究者の流動性が向上することが期待されている 。
このような流れの中で、ポスドク研究者の置かれている状況は、時代により大きくクローズアップされている。筆者の本務先である奈良先端科学技術大学院大学は、学部を持たない大学院大学であり、学生の進路選択の一つとなりうるポスドク研究者の現状に関して調査することは、就職支援に関する大学運営の在り方を考える上でも大きな意味があると考えている。米国におけるポスドク研究者の現状を調査することを通じて、その一端を明らかにしたいと考えている。

なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。

【氏名】 並川 雄太郎
【所属】 奈良先端科学技術大学院大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ワシントン研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
人材育成 若手研究者育成、研究者の雇用
統計、データ 統計・データ
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