【国際協力員レポート・アメリカ】海外拠点の状況調査と米国における働き方

昨今、日本の企業をはじめ、多くの政府関係機関や大学法人が、海外機関との連携強化やプレゼンス向上のため、海外拠点を設けるようになった。ワシントンD.C.にある日本法人の多くが加入しているJCAWによれば、2017年2月時点で104の法人を確認することが出来る。また、NIHおよびその周辺の研究機関に所属する日本人研究者の交流を目的としたNIH金曜会や、そのようなコミュニティをつなぐ集まりとして海外日本人研究者ネットワークUJA等も存在し、UJAによれば、北米だけでも日本人研究者をつなぐ29のコミュニティが存在していることがわかる。日本の企業や研究者をつなぐネットワーク以外にも、ワシントンD.C.周辺にある科学関係法人のみを対象にした連絡会なども存在し、それぞれの間でイベント情報の交換や課題の共有等が行われ、当地におけるアクティビティの向上につながっていることがわかる。
海外拠点の増加やコミュニティ間も含めた連携が進む一方で、現在日本は人口減少期に入っている。総務省統計局が公表する人口ピラミッドを確認すると、第1次ベビーブームの世代がすでに65~67歳、第2次ベビーブームにおける世代が40~43歳となっており、低出生率を背景に本格的な少子高齢化時代へと突入していることがわかる。
また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」によれば、2048年には総人口は1億人を割り、2035年には3人に一人が老年世代(65 歳以上)となることが予想されている。労働力人口、積極的な消費活動が見込まれる購買層の人口は今後も減り続けることが見込まれ、日本企業や法人が同様の規模を維持し、もしくは発展していくためには、日本国内での競争もさることながら、日本国外に活動の場を移していくことが必要となる。現在の日本企業では、日本国外でビジネスを展開していくことが一般的に想定されるようになったものの、海外展開が進み他国での活動が盛んになるにつれ、国によっては各種関税や規制 による不平等な国際競争が求められたり、企業側も租税回避地を利用した節税における倫理的な 問題が指摘されるなど、日本に限らずグローバル企業の国を跨いだ活動において、多くの問題が 指摘されるようになった。法人が海外で活動する際には、それぞれの国との間にある規制やルール、現地の法律や規制、環境や風習も異なることからその国の内情をよく理解することが求められる。TPPや各FTAなど、貿易や通商の側面において共通ルールを策定する動きもある一方、昨今の英国や米国の状況を鑑みると、国際的な共通ルールの枠組みを作るには、一筋縄ではいかないことも明らかな事実である。国際的な労働をめぐる制度に関しては、労働条件などの改善を目的とする国際機関としてILOが1919年に創設され、2017年2月時点では187ヵ国が加盟し、各国の政府、労働者、使用者それぞれの代表が共同で国際労働条約の審議採択など行っているが、日本においても批准していない条約が多くみられる状況にある。本稿では、海外拠点の展開や活 動状況について調査をするとともに、海外で業務を行う場合にどのような点に注意すべきか調査を行った。

なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。

【氏名】 伊與泉 文彰
【所属】 東京大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 ワシントン研究連絡センター

地域 北米
アメリカ
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
国際交流 国際化
人材育成 研究者の雇用、職員の養成・確保
統計、データ 統計・データ
レポート 国際協力員