米国において、公立高等教育は大きく三種類に分類される。学術研究の中心的存在である研究大学、実践的分野の教育や教員養成を主に行なう総合大学、そして広く一般に職業訓練プログラムや学部前半の教育を提供する二年制のコミュニティ・カレッジである。
その中でも、研究大学は社会にとって特別な役割を果たしている。公立研究大学は、研究活動やイノベーションを牽引する存在であると同時に、学生への教育によって多くの研究人材など将来のリーダーを輩出し、国全体の経済発展に非常に大きく貢献している。また、質の高い教育の機会を、全ての所得レベルの学生に対して提供することは、公立高等教育全体の大きな役割のひとつである。
しかし、昨今の景気後退や医療費増加等の影響を受け、米国全体で公立高等教育に対する公的投資は減少しつつある。研究教育レベルを維持しながらも全ての所得レベルの学生に教育の機会を提供し続けるため、各大学ではコスト削減や民間との連携強化、また授業料を値上げする一方で学生に対する資金援助を充実させるなど、様々な対応を行なっている。
さらに、大学単体での対応だけでなく、より大きな枠組みでこの課題に取り組む動きもある。米国芸術科学アカデミーでは「Lincoln Project」を立ち上げ、公立研究大学の重要性や将来的な大学支援の在り方について、幅広い提言を行なっている。これらの提言は、大学のみならず政府、民間に対しても広く大学支援のための取組を要請しており、日本の大学運営を考える際にも参考になると考えられる。本レポートでは、米国における高等教育に対する公的投資の状況を概観し、また、特にカリフォルニア大学における事例や、Lincoln Projectによる取組を紹介する。
なお、報告書全文はこちらから閲覧可能。
【氏名】 橋本 有葵
【所属】 東京大学
【派遣年度】 2016年度
【派遣先海外研究連絡センター】 サンフランシスコ研究連絡センター