【ニュース・フランス】原子核の魔法数に関する日仏共同研究

フランス原子力庁(CEA)、フランス国立科学研究センター(CNRS)、パリ南大学、ストラスブール大学の研究者たちが参加する日仏研究者はもっとも不安定な原子核を研究するための実験を考案した。最初の研究結果は2015年11月3日にPhysical Review Lettersに発表される。原子核内の挙動を支配する自然界の4種類の基本的な力のひとつである、強い相互作用の理解において、研究成果をあげた。

われわれの世界で作用する4種類の力とは、重力、電磁気力、放射線崩壊のもととなる弱い相互作用、そして物質中で起きる強い相互作用である。強い相互作用の変形である核力は原子核の中で核子(陽子と中性子)同士を結びつけているものである。これは複雑な量子現象の元となるもので、宇宙でもっとも軽い原子からもっとも重い原子までを作り出すものである。陽子や中性子がある特定の数「魔法数」のとき、原子核は他の場合と比べて特に安定となる。物理学者たちは、安定となるメカニズムの解明を進めている。

ヨーロッパのエクセレンス・プログラムと世界に類のない日本の加速器の組み合わせこの挑戦には、不安定な原子核の分光を行うため、すなわちエネルギー準位を測定するためにMINOSシステムが開発された。このシステムは理研の仁科加速器研究センターのRIビームファクトリーの加速器の傍らで2014年に実用化された。この加速器は中性子数の多い原子核を作り出し、これまで、まだ研究されていない原子核を調べるためには、世界でもっとも優れた装置である。

魔法数の謎を解く
CEAでの技術開発と最初の一連の実験に5年を費やし、日仏の研究者チームは最初の研究結果を発表したところである。最初の実験は、現在実現可能なものでもっとも中性子に富んだクロムと鉄の原子核について行った。この測定結果はPhysical Review Letterに発表されており、この領域でもっとも中性子が多いN=50(中性子数50)の性質を扱っている。今後、MINOSを使って他の実験が行われるが、不安定は原子核の魔法数の謎を解き明かし、われわれの理解と原子核のモデル化の助けとなるだろう。2007年に始まり、ERCはHorizon2020プログラムのひとつの柱となっている。

フランスの貢献
CEAの宇宙基礎法則研究所(CEA Irfu)の研究チームによって設計・開発が行われたMINOSはEUの科学エクセレンス・プログラムとして、ヨーロッパ・リサーチ・カウンシル(ERC)の資金援助を受けている。ERCは知識の最前線研究を支援する全ヨーロッパ最大の研究支援機関である。

実験はIrfuとオルセー原子核物理研究所(IPNO、CNRS/パリ南大学)のチームによって行われ、理論計算はユベール・キュリアン多領域研究所(IPHC、 CNRS/ストラスブール大学)で行われ、その解釈にはIPHCとIrfuが関わった。

 

・フランス国立科学研究センター(CNRS)

Une expérience franco-japonaise en quête des nombres magiques nucléaires(2015年10月28日)

地域 西欧、アジア・オセアニア
フランス、その他の国・地域
取組レベル 国際機関レベルの取組、大学等研究機関レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 研究
国際交流 国際化、研究者交流