【ニュース・フランス】フランス版ケンブリッジ、ためらいながらもスタート

パリ南大学、エコール・ポリテクニクを含む18の機関が、統合大学として再編成されるだろう。

パリ-サクレー計画がいよいよ始動した。フランスが世界のトップ20にしたいと考えているこの新しい大学、すなわち研究重視型統合大学計画に関して、最終的にはすべての人が賛成した。単なる機関の寄せ集めではなく、真に有機的に統合された大学を目指す。これは2015年12月22日、イニシアティブ・オブ・エクセレンス(IDEX)の審査会において提出された中間報告で再確認された。2012年に10億ユーロの基金でスタートした政府計画のひとつである。

18の構成機関をパリ-サクレーに集めるが、その中にはパリ南大学、サントラルシューペレック、HEC経営大学院、フランス国立科学研究センター(CNRS)、ポリテクニクが含まれている。

パリ-サクレーの創立メンバーは2012年以来、たくさんのことを行ってきた。また、2015年1月に創設された機関が、共同の学位とマスターのうち80%を出し、2015年6月にジル・ブロックが学長に就いた。今後の課題はシンプルである。世界競争の中で、各国は力を集中させている。シンガポール、北京、ローザンヌこれらの大学は急速に力をつけ、ハーバード、ケンブリッジ、チューリッヒをライバルと見なしている。そこにパリ-サクレー大学がフランスの巨人として乗り込むことになる。しかし、どの程度までこれら構成機関が統合されるのか、それが問題である。多くの機関はテーマ毎のカレッジとして、緊密な連携をとることに合意している。最初、エコール・ポリテクニクは約束どおり振る舞ったが、2013年に就任したジャック・ビオ学長は、戦略変更でより独立性を高めた展開を望んでいるようだ。しかし、それについてル・モンド紙の取材に答えてはいない。

 

「このところ、エコール・ポリテクニクは『統合』を話題にしたくないように見える。いくつかのエコールは、bac+3でリサンス、Bac+5でマスターという、大学だけがもつ資格を出すシステムを自分たちももつために、自分たち同士でグループを作りたいと考えているのではないか」これはパリ南大学のジャック・ビトゥン学長の言葉である。グラン・ゼコールはエリートのため、大学は希望するあらゆる人のため、というフランス独特の二分体制を世界に転用しようということにつながり、それは論外である。

この対立はこの数ヶ月さらに高まっている。2015年6月にはベルナール・アタリによるポリテクニクに関するレポートで、複数のエンジニアリング・スクールを統合するという案が提出されている。また、2015年12月にはエマニュエル・マクロン経済・産業・デジタル大臣は「パリ-サクレー大学」における教育、研究、国際化そして企業連携というセンター・オブ・エクセレンスのもとにすべてが集まるよう求めている。

大学関係者はこのような事態に怒りを表している。エクセレンスという点ではむしろ大学の方が優っている。パリ南大学は上海ランキングで41位であるが、ポリテクニクは300位以下である。大学関係者は、このセンターが国際社会に対して独自の色をもつエコールの要塞になるのではないかと危惧している。

事態は難しくなっている。というのもパリ南大学は他大学と同様、マスター、ドクターの授与をパリ-サクレー大学に委ねているが、現状、パリ-サクレー大学は上海ランキングでは未知の大学である。大学が実はひとつではないという印象は、重大な結果を招きかねないとパリ南大学の研究者で、フランス科学アカデミーの会員のパトリック・クーヴルーは警告している。「アングロ・サクソンの連中の気質はよくわかっている。もし、策を練っていると知ったら、われわれが考えているように、ランキングでパリ-サクレー大学はひとつの大学としては扱われないだろう。」

ここで2015年12月22日、ポリテクニクは軟化した。「統合」されたひとつの大学のもとに正式に合流することになった。しかし、これですべてが解決したわけではない。「統合」は確かだが、どの「程度」まで統合なのか。問題はむしろ先送りされた形である。意見を通したジル・ブロック学長は、この「統合」という言葉から、教員の中には、グラン・ゼコールが大学に吸収されてしまい、学生を選抜する入学試験や予算に関するグラン・ゼコールの権限を失うのではないかと考えているようだ。しかし、われわれはポリテクニクやHEC経営大学院、あるいはカッシャン高等師範学校の存在を消し去るつもりはなく、むしろ、それらはパリ-サクレーの有力な「切り札」である。

もうひとつの未知数。それは上海ランキングに対してどの機関が代表するかである。これは2015年12月22日のドキュメントでも故意に曖昧なままである。ジル・ブロック氏によれば、上海ランキングに載る名前はパリ-サクレーであり、これはパリ南大学やポリテクニクの名前が消え去る前でなければならない。しかし、たとえば、フィナンシャル・タイムズによるマネジメント・スクールのランキングでHEC経営大学院がトップであるように、分野別のランキングにおける各機関の存在をも無視することになる。

このパリ-サクレーの件についてはまだある。つまり、パリ-サクレーの国際競争相手も同様に追従するだろう。IDEXのメンバーになることは名誉であり、国内における研究に占める割合は15%と高く、象徴的でさえある。それはフランスが国際競争において巧みにハンドルを切ったやり方を如実に物語っている。ずっと以前から、多くの点で旧式、不平等が内在してきた大学、グラン・ゼコール、研究という3つに分かれていたが、フランスの高等教育制度は根本的に配置換えの時期に来ている。国際競争は激しく、その変革には一刻の猶予も許されない。

 

・フランスのスーパーユニバーシティ

2009年に始まった「未来への投資プログラム(Programme d’Investissements d’Avenir:PIA)」の一環として、2011年から2012年にかけて、イニシアティブ・オブ・エクセレンス(IDEX)というラベル(お墨付き)が付けられ、国際的に広く認められ、優秀な人材を集める大学を目指すスーパーユニバーシティの創設のため、8つのプロジェクトに対して総額64億ユーロが充てられた。最初に選ばれた8つのプロジェクトは、エックス-マルセイユ大学、パリ-サクレー大学、ボルドー大学、パリ・シアンス・エ・レットル、ソルボンヌ・パリ・シテ、ソルボンヌ大学、トゥールーズ大学、ストラスブール大学である。第2回目の選考が近く行われる。

ル・モンド2015年12月28日

 

Le « Campbridge français » sur les rails, malgré les réticences

地域 西欧
フランス
取組レベル 政府レベルでの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価