欧州特許庁(EPO)とフランス国立産業財産庁(Institut national de la propriété industrielle:INPI)は、 2014年に公開された特許出願数を公表した。
一方、フランス国立科学研究センター(Centre national de la recherche scientifique : CNRS)は毎年、 公開されているデータと独自の内部データに基づいた出願特許数を発表している。各特許庁が発表した、年毎のCNRSの優先特許出願数はつぎの表のとおりである。
【CNRSの優先特許出願数】
データソース | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 |
CNRS:公開特許–すべての国 | 356 | 454 | 555 | 627 | 680 | 745 | 766 |
CNRS:公開特許–フランス | 229 | 317 | 357 | 446 | 487 | 510 | 538 |
INPI:公開特許-INPI出願 | 207 | 277 | 380 | 383 | 414 | 408 | 409 |
INPI:公開特許–世界主要7機関* | 510 | 548 | 565 | ||||
EPO調査 | 174 |
*7つの特許庁とはフランス国立産業財産庁(Institut National de la Propriété Industrielle:INPI)、ドイツ特許商標庁(Office allemand des brevets et des marques:DPMA)、日本国特許庁(Office des brevets du Japon:JPO)、韓国知財庁(Office coréen de la propriété intellectuelle)、中国国家知財庁(Office d’état de la propriété intellectuelle de la République populaire de Chine:SIPO)、米国特許庁(United States Patent and Trademark Office:USPTO)、世界知的所有権機関(Organisation mondiale de la propriété intellectuelle:OMPI)であり、これに加え、欧州特許庁(Office eruropéen des brevets:OEB)=EPO
データ収集の条件(INPI、CNRS)
産業財産庁(Institut national de la propriété industrielle:INPI)とCNRSのデータはCNRSが出願人となっている公開された特許数を反映している。したがって、公開18ヶ月前に出願された特許の数となる。たとえば、2014年中に公開されたものは2012年7月1日から2013年6月30日までに出願された特許数となる。
特許出願は優先権の根拠となる日付を決定し、その日をもって、特許による保護が可能となる。この出願はINPIに加盟しているフランスの特許庁でもあるいはその他の特許庁でも行うことができるが、この優先権を保護するため、最初に特許を出願するのがどこの国であろうと、ただ一回しか行うことはできない。どの国で出願するかは複数の要素が絡んでくる。つまり、緊急性、出願する機関がもつ知的所有権に関する政策、特定の発明に関連する戦略、共同出願者の国籍、研究が部分的、あるいはすべてが実施されたのがどの国であったかなどである。
特許出願の実際
実際には特許出願は複雑な手続きである。出願者のリストはそのまま知的所有権の共同所有者でなければならない。実際には、共同所有者のうちの誰かが、出願のイニシアティブと責任(または、そのどちらか)をとる。つぎの2つの要素が出願者のリストに影響を及ぼす。
・出願はときとして緊急を要する。なぜならば、公開が差し迫っている場合(学術誌に公刊する、学会でポスター発表する場合、会議での発表など)。共同所有者のうちのひとりが当人だけの名前で出願を行い、その後、他の共同所有者を加える。
・フランスの研究機関(unités mixtes de recherche:UMR)の特殊性と発明過程において、さまざまな形で関与したパートナーとの間のさまざまな合意(発明を行ったサイトでの契約、フレーム合意、混成ユニットの契約、共同研究に関する合意)は権利者が誰であるかを決めるのに時間がかかることもある。時間的要素が決定的となる競争環境において発明を保護する必要性から、特許の出願は最終的な確認が終わる前に行われる。出願後に、法的な権利の共同所有権を確立して、発明者に当然の金銭的な見返りをもたらし、発明や特許の元となった研究に投資をした研究所や機関はその益を得ることになる。
CNRSのデータでは、公表しているデータにおいて、特許出願公開時に共同出願者には名前を連ねない特許もすべて反映している。しかし、特許登録後には共同所有者となっている。共同出願者には名を連ねていないCNRSがもつ特許が占める割合は、2008年から2014年にかけて、10%から25%に増えている。
欧州特許庁(EPO)の調査にみる特殊なケース
EPOが発表する数字はINPIやCNRSが発表する数字と比較することはできない。その理由はつぎのとおりである。
・欧州特許庁の数字ではヨーロッパレベルで登録された特許だけでなく、先んじて他の特許庁に登録されたり、ヨーロッパ域内でも他のプロセス(PCT、国内特許)で登録された特許も含んでいる。
・欧州特許庁の数字は筆頭出願者しか勘定に入れない。したがって、CNRSが共同出願者となった特許でも、CNRSの名前が2番目以降に記載されている場合は、CNRSによる発明とは勘定されない。しかし、このような場合でもCNRSの特許への貢献度は他の共同出願者と同じ重みをもつ。欧州特許庁による登録特許数のデータとランキングで、個々の機関がどれほど発明をしているかを検討するには注意が必要である。
発明におけるCNRSの貢献度は常に増加傾向にあり、とりわけ、フランス国内外における特許出願に顕著である。
URL2: http://www.cnrs.fr/lettre-innovation/actus.php?numero=231