【ニュース・フィンランド】授業料導入と予算削減が高等教育の国際化を直撃

2017年5月5日、メディアの報道によると、フィンランドはEU・EEA(European Economic Area:欧州経済地域)圏外の留学生からの出願数急落と科学者の流出に直面している。留学生に対する授業料の導入と大学への資金削減が原因とされている。

 

フィンランドの放送局Yleの報告によると、昨秋、EU・EEA圏外からヘルシンキ大学への出願数は30%減少した。これは、EU ・EEA圏外の留学生がフィンランドで勉強するために、2017年秋から授業料の支払いが必要となったことに関連していると考えられる。フィンランド教育文化省によると、授業料は4,000ユーロ~2万ユーロ(約52万円~約260万円*)となる予定である。一方で、2015年には375人の高等教育を受けた人々がフィンランドを離れ、156人がフィンランドに移住したとYelは報告した。2005年から2015年の間に3,124人の科学者がフィンランドを離れ1,963人がフィンランドに移住したことにより、実質1,161人の科学者が国外へ流出したことになる。

 

フィンランド大学連合のLeena Wahlfors理事長は、「EU・EEA圏外からの出願数は授業料が原因で減少するだろう、しかしそれは大きな問題ではない。フィンランドは質の高い教育に定評があるので、より才能豊かでやる気のある出願者を引き寄せることができるだろう。」と述べた。
彼女はまた、一箇所に留まらず国際的なキャリアを積むことは研究者にとってありふれたことだと述べ、「国外へ出て行く研究者と新しく入ってくる研究者とのバランスは、現時点では出て行く方に傾いているようだ。これは、高等教育部門で行われた予算削減と、その削減により引き起こされた労働条件によるもので、見方を変えると、海外でもフィンランド内でも、研究者間では教授やその他の高度な研究職への関心がまだ高いと言える。」

 

しかし、フィンランドの大学研究者・教員連盟の議長であるPetri Koikkalainen氏は、研究者の移住を無視又は軽視することに対して警告を発した。「多くの人々が海外に進出していることは良いことだが、もし外国人の専門家や帰国者に仕事を提供できなければそれは危険だ。したがって、専門的知識者の流出の原因を真剣に検討するべきだ。」

 

*円表記はJSPSストックホルム研究連絡センターが追記

 

【出典】
University World News:Tuition fees and cuts hit internationalisation of HE

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン、その他の国・地域
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
国際交流 国際化
学生の経済的支援 学費