【ニュース・デンマーク】大学が直面する政府予算の削減

Lars Lokke Rasmussen政権は、大学と学生融資制度への予算を削減し、高等教育機関における政府の統制力を高めようと動き出した。政府は、2015年から実施している高等教育機関予算の2%削減を2020年まで延長する。2017年~2020年に100億デンマーククローネ(約1500億円)以上を削減する方針である。
これに対して、27,000の企業から成るデンマーク企業連合、デンマーク産業団体連合、100万の会員を代表するデンマーク労働組合連合は合同で厳しく非難している。
また、政府は公共投資の方向性を変え、税制改革を行うという野心的な政策を盛り込んだ「2025計画」に取りかかっている。それにより、デンマーク学生融資やSU奨学金*(学生奨学金及びローン)は、年44億デンマーククローネ(約676億円)の削減案を突き付けられ、奨学金は教育ローンに取って代わることになる。
科学技術系の職能団体The Danish Society of Engineers(IDA)が学生1,000人に行った調査によると、SUの方針転換により、2人に1人の学生が勉学を諦めることになるという。IDA教育研究委員会の議長を務めるCarsten Eckhart氏は、次のように政治家に警告する。「もし工学と自然科学の学生の2人に1人が修士課程への進学を諦めた場合、デンマークにとって大変な問題になる。工学技術同盟の予想では、2025年には4,200人の自然科学系学位取得者と9,300人の技師が不足する事態になるだろう。」
一方、高等教育科学大臣のUlla Tornæs氏は、「全ての若者が高等教育を受ける機会を持てるようにすることが重要である。SUの変更により、教育自体は無料である」と話す。Tornæs大臣によれば、予算削減により節約されたお金は、再分配されるという。政府は、2019年から毎年、高等教育の授業改善に対し、10億デンマーククローネを割り当てることを提案している。デンマーク人の能力及び教育の質を高め、ビジネスの研究を強化する狙いがあるという。

 

* SU(Statens Uddannelsesstøtte/State Educational Grant and Loan Scheme)
デンマーク人またはEU/EEA(欧州経済領域)圏内からの学生及び交換留学プログラムの学生は、学費が無料である。SUは、学生が社会的身分に関わらず教育を受けることができるよう生活費を支援する制度。主なプログラムとして、①18歳以上で、普通高校か専門高校に通う者、もしくは専門教育訓練プログラムの受講者を対象としたものと、②高等教育機関への入学者を対象としたものの2つがある。

 

【出典】
University World News:Universities face more cuts and more political control

 

【参考】
SU:Uddannelses og forskningsministerウェブサイト:State Educational Grant and Loan Scheme(SU)

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
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