【ニュース・デンマーク】就学支援を受けた外国人学生が卒業後にデンマークから流出

国の学生向け融資やSU奨学金*(学生奨学金及びローン)を受給しているEU/EEA**の外国人学生のうち、42%が卒業後2年以内にデンマークを去っており、デンマークで就職する者はわずか38%であることがわかった。
Ulla Tørnæs 高等教育科学省大臣は、「この数字は、デンマークが多くの外国人留学生に無償の高等教育やSUを提供しているにも関わらず、その投資分の利益を回収できていないことを意味する。我々は、デンマーク高等教育システムとEUの単一経済市場を利用した外国人留学生が、無償教育を受ける目的でデンマークに滞在し、卒業後は母国に帰ることを全く想定していなかった。」と述べ、政府による対策が必要であることを説いた。さらに、「我々は学生融資を減らすという政府の提案を前向きに検討し、公平性と正義を念頭に、融資制度のバランス回復に努めなければならない。」と融資制度改革の必要性を示唆した。
また、政府は職業訓練プログラム(erhvervsuddannelse)の調査を開始した。このプログラムはEU/EEA諸国からの外国人学生を最も多く受け入れており、どの程度の英語によるコースを提供しているか、特に専門学校において外国人学生の入学審査基準が甘くなっていないか等について政府の調査を受ける。
同時に、同省は外国人学生に卒業後もデンマークに留まり働くことを選択してもらえるよう、例えば対象者に税金の払い戻しを行うなどのインセンティブを用意することを検討している。
これに対して、2つのシンクタンクKrakaとEuropaが、それぞれ2016年に調査報告書を発表し、その中でいくつか政府への提言を行っている。例えば、受け入れるEU/EEA学生の分野については、社会科学系より社会の需要が高い自然科学系や科学技術系の学生を積極的に入学させることを両シンクタンクは提案している。また、シンクタンクKrakaによれば、スカンジナビア諸国出身の学生は卒業後に母国に戻る傾向が顕著に表れているため、卒業後もデンマークに留まる可能性がより高い東欧諸国の学生の獲得に照準を合わせるべきだという。一方、シンクタンクEuropaは、「デンマークは他のEU諸国からの学生をスケープゴートにするのではなく、外国人学生の潜在能力をより上手に開発・利用できる分野を探すべきである。」と主張する。
コペンハーゲン大学の学生新聞(Universitetsavisen)は、「外国人学生に関する問題を理由に全学生が対象であるSUを減らすという議論は、政府のヘタな言い訳だ。」と酷評し、「彼らは外国人学生に注意を向けることで、一番重要な問題から目をそらしているに過ぎない。」と非難している。

 

* SU(Statens Uddannelsesstøtte/State Educational Grant and Loan Scheme)
学生が社会的身分に関わらず教育を受けることができるよう生活に必要な費用を支援する制度。主なプログラムとして、①18歳以上で、普通高校か専門高校に通う者、もしくは専門教育訓練プログラムの受講者を対象としたものと、②高等教育機関への入学者を対象としたものの2つがある。

 

** EEA(欧州経済地域:European Economic Area)
EUとEFTA(欧州自由貿易連合:European Free Trade Association)加盟国(スイス除く)を統合して創設された自由貿易の共同市場。加盟国はEU市場にモノ、サービス、資本を自由に移動できるほか、教育、環境、観光、消費者保護など広い分野で協力する。

 

【出典】
University World News:Minister moves to deter EU students who do not stay on

 

【参考】
デンマーク高等教育科学省:State Educational Grant and Loan Scheme (SU)

地域 北欧・バルト三国、EU
スウェーデン、その他の国・地域
取組レベル 政府レベルでの取組
国際交流 国際化
学生の経済的支援 学生向け奨学金
人材育成 学生の就職