【ニュース・タイ】欧米大学の東南アジアブランチキャンパスの人気

アジア人は、世界の大学の留学生数の大部分を占めているが、アジアの経済発展とともに、欧米の高等教育機関がアジアの高等教育市場に乗り出してきている。
中国とインドが欧米の一流大学をひきつけている一方で、東南アジアにブランチキャンパスを設置する欧米の大学も多い。特にマレーシアとシンガポールでは、国の教育レベル向上につながるため、政府が様々な優遇策を取り、ブランチキャンパス設置を後押ししている。
マレーシアは、ブランチキャンパス設置を海外からの投資促進と併せて推進している。ジョホール州のイスカンダル開発計画がその一例であり、さまざまなインセンティブを設けて、海外の大学を誘致している。
ブランチキャンパスは、学生とその親にとっても様々な点で魅力的である。海外へ留学せずとも自国で欧米の一流大学と同レベルの教育を受けることができ、入学についても、国内大学と比較すると難しいものの、親大学へ入学するよりも比較的易しい。さらに、親大学と同じ学位をブランチキャンパスで取得することができる。ブランチキャンパスの学生に対して親大学への1年間の留学プログラムを提供する大学もある。
シンガポールやマレーシアにブランチキャンパスを設置するモナシュ大学、ジェームズクック大学、ニューカッスル大学では、入学者数が過去最高を記録した。
オーストラリア・メルボルンにメインキャンパスを置くモナシュ大学は、2012年に世界各国のキャンパス全体で22,057名の自国以外の学生が在籍し(全学生数の30%)、その多くをマレーシア、中国、インドネシア、シンガポール国籍の学生が占めている。オーストラリア・クイーンズランドに拠点を置くジェームズクック大学も、アジア人学生が全学生数の約半分を占め、シンガポール国籍の学生は全学生の22%に上る。モナシュ大学マレーシア校では、マレーシア国籍の学生は全体の70%を占めており、ジェームズクック大学シンガポール校では30%がシンガポール国籍である。
ブランチキャンパスの入学者数は順調に増加しているが、多くの大学では、今後しばらくアジアでブランチキャンパスの数を増やす計画はないという。今後は数の拡大よりも、教育の質の向上に力を注ぎたいと考えている。
ジェームズクック大学のDale Anderson学長も、「現時点では、他の国にさらにブランチキャンパスを拡大しようとは考えておらず、既存のキャンパスで質の保証された教育を提供していきたいと考えている」と述べており、ジェームズクック大学シンガポールキャンパスは、既存の2つキャンパスを近い将来、一つに統合する予定だ。
マレーシアに医学部ブランチキャンパス(NUMed)を設置する英国のニューカッスル大学も、Prof Ella Ritchie副学長によると同様の方針である。NUMedは、設立当時は2コースだけだったプログラムが7コースにまで拡大し、今年の6月には医学部の第一期生が卒業する予定だ。
モナシュ大学は、1998年、マレーシアブランチキャンパス設立に6,500万USドルを投資し、タイやシンガポールなど、キャンパスを設置していない国からも学生を獲得し、マレーシアキャンパスに呼び込むことに力を注いできた。
学生の入学基準はキャンパス設置国によって異なる。ニューカッスル大学の本キャンパスに入学を希望する外国人学生は、申請書を英国大学入試機関(Universities and Colleges Admission Service (UCAS))を通して大学に提出しなければならない。一方、シンガポールとマレーシアブランチキャンパスに入学を希望する学生は、英語能力と中等教育卒業同等の資格があればよい。ブランチキャンパスで提供される授業の質は、親大学のもの同等であることを大学は保証している。その基準として、ニューカッスル大学シンガポール校の教員のほとんどは英国から派遣されている。シンガポール校で現地採用された教員は少数で、彼らはニューカッスル大学でも教員経験があるか、同大学の教育方針を十分に理解していなければならない。
授業料も魅力の一つでキャンパス所在地に応じた額が設定されている。例えば、モナシュ大学メインキャンパスでは文学部学生の授業料は年間26,300オーストラリアドル(77,350マレーシアリンギ)だが、マレーシアキャンパスでは31,000マレーシアリンギである。
ブランチキャンパスの需要拡大に伴い、今後は様々な大学がアジアでのブランチキャンパス設立参入が予想される。受入国の政府は、これまでに得られた経験を生かし、国内の教育と経済発展のため、さらに海外の大学を誘致するために柔軟な制度作りを進めていくだろう。

(2014年8月25日 Bangkok Post紙)

地域 アジア・オセアニア
タイ、その他の国・地域
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
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