【ニュース・タイ】政府が海外派遣奨学金を復活

-教育省がドロップアウトを抑制し、国家公務員を増加させるための新しい条件を設定-

教育省は、『一つの地域に一つの奨学金(One district, One scholarship: Odos)』の枠組みの復活を予定していることを発表した。Odosは、貧困家庭出身の成績優秀な学生に海外で教育を受ける機会を提供するタクシン時代のプロジェクトである。

2004年にタクシン政権によって導入されたOdosの枠組みは、貧困家庭出身の高校3年(Mathayom6 / Grade12)の学生に海外で勉強する奨学金を提供し、外国の知識と新しい技術をタイに持って帰ってもらい発展を促進に役立てるというものである。

プロジェクトの第1期、第2期の支給対象は抽選で決定された。奨学金の受給資格は、学生の家庭が年収150,000バーツ以下であり、過去5学期に於いてGPAが3.00以上であることとなっている。英語圏以外の派遣先は、フランス、日本、ドイツ、中国等である。しかし、抽選制度が中止となったため、第2期支給のあと、スラユット政権によって解体された。

多くの学生が外国での勉学生活に適応できず、時期尚早に帰国したため、この枠組みは批判にさらされた。第1期では740名の学生が外国に派遣されたが、113名は早期帰国した。ドイツでは、20名近くの学生がタイに戻ってしまい、17歳の学生がストレスとプレッシャーにより自殺した。早期帰国した学生たちは、政府が十分に準備をさせなかったため、大きな言葉の問題に直面したと述べた。

枠組みはインラック政府により復活したが、社会経済的な背景にかかわらず、誰にでも奨学金が支給されるよう、補正された。その際、受給者は英語圏で勉強することが認められ、奨学金の返還義務や政府のために働かなくてはならないという条項は撤廃された。しかし、元々の枠組みは、富裕家庭や社会的に影響力のある人物の子女ではなく、貧困家庭出身の学力の高い生徒の支援を意図していたため、この新制度は枠組みの誤用の可能性を招くとして非難を浴びた。

Odosプロジェクトを監督している、子供・若者研究開発センター(the Research and Development Centre on Children and Youth)の報告によると、2004年以降、Odosプロジェクトは3093名の受給者に対し290億バーツ以上を支給したが、コースを終了したのはたった1587名である。これまで奨学金を受給した卒業者のうち公務員は11%に過ぎず、70%は私営企業、2%はまだタイに戻ってきておらず、残りは自営業者である。

調査結果はこのプロジェクトは実施する価値があるのかという疑問を提起した。Dapong Ratanasuwan教育大臣は、「プロジェクトを擁護し、失敗とは考えておらず、当初意図されていたように、貧困家庭出身の子女により多くの高等教育の機会を提供できているのであれば有益である」と述べた。

Dapong大臣はまた次のように述べた。

「教育省は本当に必要としている学生だけが受給するという条件の下、この奨学金プログラムの第5期計画を承認する予定である。

規則の改定により、年収が250,000バーツ以下の貧困家庭出身の学生だけが対象となる。

卒業後は公務員になるよう定められており、おそらく、学術研究より職業教育を受ける学生を選定する可能性が高い。

現在の応募条件はあらゆる家庭環境の学生の応募を認めており、曖昧であり、誤用されている。教育省は条件の見直しのため、委員会を設置した。受給者のうち何割かには、卒業後タイに戻り公務員として働いてもらうため、条件を注意深く見直す必要があり、そのため教育省は新たに委員会を設置した」

Somphong Chitradub子供・若者研究開発センター長兼Odosアドバイザーは次のように述べた。

「このプロジェクトは現在中央政府予算から予算配分されているため、税金が正しく使われるよう、見直しを行うべきである。教育省は年収が250,000バーツ以下の貧困家庭出身の学生を対象に、奨学金の第5期の募集を行う予定である。受給者は、本人の希望を追求するのではなく、タイ労働市場の需要がある分野で勉強しなくてはならない。また、奨学金の返還義務も発生するかもしれない。

次期は非英語圏とASEAN地域への学生の派遣に焦点を当てる。英語圏で勉強するための学生の経済支援には他の枠組みがある。Odosの予算が適切に使われていることを示すことが重要である。

Odosは最低でも半数の受給者が帰国して公務員になることを目標としている。受給者の帰国に際しては政府が職業紹介を行い、またドロップアウトの割合を減少させるため、派遣前に十分な語学トレーニングを受けられるようにする。これまでの受給者の大半が民間企業に就職したのは、政府がポジションを準備していなかったためである。これまで多くの問題を経験してきたが、それらの問題から学び、同じ間違いを繰り返さないように努めたい」

 

(2015年10月19日 Bangkok Post紙)

地域 アジア・オセアニア
タイ
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