【ニュース・タイ】大学は基準を向上させる困難な試練に直面

高等教育レベルをASEAN地域内で国際レベルに引き上げることは、資金の乏しい国にとっては課題である、と専門家は指摘

 

ASEAN地域内の高等教育機関が、シラバスの問題、制度の多様性、国際系職員の不足や政府の限定的な支援などの国際基準を満たそうと取り組む際に直面する課題を研究者らは強調してきた。

 

ASEAN経済共同体が今年正式に発足したことに伴い、教育の質改善は、依然として同共同体の主な目標の一つとなっている。

 

このトピックは、先日のタイ外国人記者クラブでの「ASEANは世界的高等教育機関としての目的地になれるか?」と題されたフォーラムの焦点であった。

 

バンコク大学のJames Gomez教授は「ASEANの多くの大学は教育の質を改善し、さらに重要なことには、より多くの学生を誘致しようと大学をリブランド化するため、国際的な組織になろうと改革に取り組んでいる。」と述べた。

 

「多くの大学の役員は、大学のブランド価値を高めるために国際化を選択する。それはより多くの学生を誘致することによって、その大学の財政的実行可能性を保証するからである。」と同教授は述べた。

 

一方で、「多くの大学は通常、シラバスを母国語から英語に翻訳するため、カリキュラムは、実際には国際化されていない。」とも述べ、
「他の問題としてシラバスは通常その国の人が作成するため、結果的に真に国際的に通用するものではなく、母国に特化した問題に焦点が向けられる。」
「この分野での私の経験から、国際系の大学職員の多くは、一般的には大学の言語部門や国際学科で勤務し、大学の政策を指揮できるような主要学部や幹部ポジションには配置されない。」と続けた。

 

ASEAN大学ネットワーク事務局長のNantana Gajaseni准教授は「ASEAN各国の教育制度は多様性が大きく格差も大きいため、ASEAN地域内で一本化された制度を調整することは困難である。」と述べた。

 

多様性によって単位移行が困難に

 

「ASEANでの高等教育の国際化の主な課題は、教育制度の多様性と教育の質の認識の相違である。この相違によって、ASEAN諸国間で、またその地域を超えての学生と単位の移行が困難になっている。」とNantana氏は述べている。

 

Gomez氏は「ASEAN内の国際系職員は、低給料、研究補助金の不足、政府の規制上の障壁が原因で不足している。」と付け加え、
「ASEANのシンガポールやマレーシアのように財政的に豊かな国とその他の国には所得格差がある。この所得格差によって、所得の低い国々で勤務する国際系職員は少ない。」
「その他の障壁は、研究補助金の制限である。例えば、マレーシアは自国の補助金への申請はマレーシア国民のみに制限している。さらに研究奨学金に対する検討は、通常、国家的視点にのみ焦点を当てており、研究者が国際的視点での研究資金に申請することは困難である。」と述べた。

 

UNESCOアジア太平洋地域教育局上級顧問のWesley Teter氏は、中国では政府の規則が国際系職員にとっての障壁になっていたという同国での教育経験を説明した。

 

Teter氏のケースでは、中国政府が課した厳しい情報規制によって、学術研究はさらに困難なものとなり、それによって国際的な研究者に対するアピールが減少した。

 

Nantana氏は「国際化の別の大きな問題は、財政上の問題である。」と指摘し、「シンガポールやブルネイのようなASEANの中でも高所得の国々は、自国の大学の国際化を奨励するのに大した時間を要しないが、所得の低い国々ではその任務は難しい。」

 

「低所得の国々には、インフラの不足など予算不足から生じる問題がたくさんある。タイですら、国は収入源を見つけることを各国立大学に任せており、もはや政府からの支援を行っていない。」と述べ、
「しかし、私見では、豊富に資金があるからといって、教育の質や国際化の成功を保証するわけではない。大学の管理者層や教授らの考え方は、国際教育に適合させるためだけではなく、変える必要がある。」とも述べた。

 

(2016年8月22日 The Nation紙)

地域 アジア・オセアニア
タイ、その他の国・地域
取組レベル 国際機関レベルの取組、大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 教育、質の保証
国際交流 国際化