【ニュース・スウェーデン】学長は役員会によって選ばれるべきか

学長選挙は、大学教職員によってではなく大学の役員会で行われるべきだとする報告書が、スウェーデン経済団体連合会によって発表された。
その報告書の中で、経済団体連合会は、今日のスウェーデンの大学のガバナンスが上手く機能していないことを指摘すると共に、一般の教職員や労働組合、学生などの大学構成員が学長選挙に関わることについて批判している。「今日の学術界は、大学代表者らが自分達では責任を持てない事項の決定にも関与しているという不透明な構造の中に在る。したがって、学長選挙における大学構成員の役割は、助言の範囲に留めるべきだ」と主張する。「将来的には、大学は、経営・権限・ビジョンを組み合わせたガバナンスを行い、組織内の様々なポジションのリーダーらで構成される役員会が従業員の仕事を監督する責務を持つべき」というのが彼らの言い分である。
また、役員会の役割を明確な指揮命令系統ラインによる運営体制で強化し、役員会には学長選抜の権限だけでなく、学長に不適切な人物を学長の座から降ろす権限を与えることを提案している。同時に、学部はより透明性のある権限をもって戦略的に組織の決定に参与すべきだと主張する。さらには、政府が役員の選考過程に関与するよう、役員会メンバーと学長の選出方法を変えるべきとの考えを表明している。
大学のガバナンス構造の推奨すべき変革に関する他の報告書を作成する委員会の会長を務めたKåra Bremer元ストックホルム大学学長は、次のように述べる。「私が長を務めた委員会では、教職員や学生に意見を聞く段階で学長候補を1名に絞ることを提案した。そうすれば選挙によるトラブルを避けることができる。すでに多くの大学が複数の候補者を立てることやヒアリングを放棄している。」
これに対してソーシャルメディアでは、様々な議論が巻き起こっている。
近々公表される研究白書に関する政府のアドバイザーグループのメンバーの一人であるSverker Sörlinスウェーデン王立工科大学教授は、「責任の明確化と大学構成員の影響力・参画の保持とのバランスが重要である」と話す。「スウェーデン政府は20年以上もの間、この問題に取り組んでいるが、未だに理想的な解決策を見い出せずにいる。しかし、産業界の原則が学長選挙にも当然当てはまると思い込むのはあまりにも極端である。スウェーデンの公的大学において教職員や学生の参画無しに学長を決めることになれば、学長と教員達との関係が上手くいかなくなるだろう。大学内で非協力的な風潮が流れる危険をはらんでいる。」と警鐘を鳴らす。

 

【出典】
University World News:Business calls for rectors to be elected by boards

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事、政策・経営・行動計画・評価