【ニュース・スウェーデン】研究の質向上についての法案を議会に提出

スウェーデン政府は、研究者の研究時間の増加や研究者のキャリアパス、とりわけ女性の研究職へ道を広げることなどを盛り込んだ研究の質向上に向けた法案を議会に提出した。
法案の鍵となるのは、大学が自分の大学の出身者を採用する現在の風潮に異議を唱え、研究者のキャリア構造を改善することであり、若者が研究職に魅力を感じられるような方策も取られるべきである。
Helene Hellmark Knutsson 高等教育研究省大臣は、「社会問題の解決と競争力強化のための知の共同」と題した今回の法案について、国の研究の今後10年を方向付け、2017年~2020年に優先的に行うべき事項を明確にする狙いがあると述べた。
また、2017年~2020年の高等教育機関への予算を合計13億スウェーデンクローナ(約160億円)に増額し、気候変動などの地球規模の研究やイノベーション、大学のデジタル化や健康、持続可能な発展、質の向上に充てる考えを表明した。しかし、法案の内容に対して金額が少なすぎるとの批判も挙がっている。
政府は、男女平等の問題について、2030年までにスウェーデンの大学の採用者における女性教授の割合を現在の25%から2倍に増やすことを明示している。そのため、政府はスウェーデン高等教育院(Swedish Higher Education Authority)に対し、教授採用における男女比率の改善に向けて、それぞれの機関がどのようにリーダーシップを発揮して対応しているかを毎年調査するよう義務付けている。

 

<資金の見直し>
法案によると、研究施設・機材を充実させていくことや、協調融資の大部分を占めるEUの研究基金で多くのシェアを確保することなどが大学の役割として期待されている。
大学の研究教育を改善するため、新しい研究基本金は学生数を基準として分配される。具体的には、公的な高等教育機関であれば、2018年時点の学生数×1.2万スウェーデンクローナ(約15万円)が、それ以外の高等教育機関の場合は同じく学生数×8千スウェーデンクローナ(約1万円)が配分される。
ところが、2017年から導入される新しい高等教育予算制度では、スウェーデンの博士課程学生は学生としてカウントされない。彼らは大学の教職員として登録され、大多数は給料が発生し、福利厚生を受けられる雇用形態である。新しい法律では、博士課程学生の雇用期間は4~6年間と明示されているにも関わらず、ほとんどの学生は4年間しか雇用されない。
Astrid Söderbergh Widding ストックホルム大学学長は、「博士課程学生数が近頃減少傾向にあるのは、博士課程取得までにかかる費用が増えていることが原因である。これからの博士課程学生は、在学中は大学に雇用される必要があるわけだが、大学は彼らの給与をまかなえるような予算を組んでいない。」と問題を指摘する。

 

【出典】
University World News:Government tables plans to strengthen research quality

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 予算・財政
大学・研究機関の基本的役割 質の保証
人材育成 研究者の雇用、研究人材の多様性