【ニュース・スウェーデン】大学自治権を無視した政府決定に大学が反発

ルンド大学、ストックホルム大学、ヨーテボリ大学、ウプサラ大学、シャルマース工科大学、カロリンスカ医科大学などの主要大学を含むスウェーデンの35大学の学長及びスウェーデン全国学生組合は、政府が大学の自治権を無視した決定をしたことについて批判をした。
事の発端は、ダーラナ大学役員会が2015年に実施した、大学の全機能をFalunキャンパスに集約する場合と、現行と同じようにFalunとBorlängeの2つにキャンパスに置く場合で、それぞれどのような成り行きになるかを分析した調査結果に反して、隣り合うFalunとBorlängeの街の両方にまたがる形で1つのキャンパスを設置しなければならないと Helene Hellmark Knutsson 高等教育研究省大臣が公言したことにある。
学長らは政府と所管大臣に対して、今回の政府決定によってどのような結果になり得るか、また、このような政府介入のリスクが高等教育機関の学術の質に長期的にどのような影響を及ぼすかについて書類を提出するよう求めている。
さらに、学長らはこの政府決定によって、スウェーデンの高等教育機関に自治権があるのかはもはや疑問であり、それに対するスウェーデンの国際的な評価は下がるだろうと考えている。
全国学生組合は、「政府が大学の細部まで統制しようとすると、結果的に高等教育機関の自治権を侵害することになる。1993年の大学自治改革を尊重してもらいたい。」と述べる。
また、Marita Hilliges ダーラナ大学学長は、「通常、大学の組織と配置に関することは役員会の決定をもって大学自身が決定するものである。役員会はこれまでも最適な方法で課題を検討し、賢明な答えを導き出してきた。」と述べる。
一方、Hellmark Knutssos 大臣は、スウェーデン全体にとって何が最適であるかが議論の焦点であるとし、次のように反論する。「政府はスウェーデン社会全体に責任を負っている。政府は、一箇所集約化はBorlängeの高等教育にとってマイナスの影響を与えることになると見ている。ダーラナ大学は1977年に創立し、以後Borlängeキャンパスは教育や研究を通じて地元の産業や商業と堅固な関係を築いてきた。Borlängeにおける大学の活動は、重要な産業の側面を持つ。Borlängeで大学運営を続けていくことは、公共サービスをスウェーデンの全国どこでも提供できるようにするという政府戦略にも沿ったものである。国全体が活性化すれば、スウェーデンはより強くなる。」
これについて、スウェーデンTV2は、「ダーラナ大学の配置の問題は1年以上続いており、政府の決定がFalunとBorlänge間で論争を引き起こした」と報じている。

 

【出典】
University World News:Minister in storm after overriding university autonomy

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
行政機関、組織の運営 組織・ガバナンス・人事