【ニュース・スウェーデン】上限の無い授業料に歯止めを

スウェーデンでは、かつては高等教育にかかる費用は税収で支えられ、国籍に関わらず学生個人の授業料負担は無かった。しかし、2011年秋より、EU/EEA(欧州経済領域)およびスイス以外からの留学生に対し、授業料徴取が導入されている。
スウェーデン国営ラジオ「Dagens Eko」は、同様の教育コースであっても大学によって授業料に2倍の開きがあることを受け、国内の高等教育機関において授業料がどのように決定されているかを特集する番組を放送した。
番組によると、ヨーロッパ外からスウェーデンに来た学生は、年間100,000スウェーデンクローナ(約120万円)以上支払わなければならないが、実際に同コースにかかる費用はその半分であった事が報じられた。
この結果に対し、Helene Hellmark Knutsson高等教育研究大臣は「費用が高額すぎることは明らかだ。前政権ではコースにかかる費用の上限を特に定めず、各大学に委ねて授業料徴取を導入した。」とコメントをしている。
その結果、学生組合は、教育の質向上に繋がっていないとして授業料を廃止することを要求し、Jan Björklund前高等教育研究大臣・自由党党首は、学生への過剰な授業料請求の有無について調査を要求することになった。
Dagens Eko は、スウェーデンの大学が広報費および授業料管理・留学生勧誘のための管理体制費を教育プログラムにかかる費用に含めていることを明らかにした。
Helene Hellmark Knutsson大臣は、秋に国内の大学国際化改善のための委員を任命するとしているが、Johan Alvforsスウェーデン学生組合委員長は現状の即時改善を求めている。Alvfors氏は、ヨーロッパ外からの学生に対する授業料が2011年に導入された後、ヨーロッパ外からの学生数は60%まで落ちこんだと述べ、授業料の導入がスウェーデンの高等教育の改善に繋がっていないと主張している。

 

関係者からの反応

  • Eva Malmström Jonssonスウェーデン王立工科大学(KTH Royal Institute of Technology)副学長
    本学では法外な授業料を課してはいない。留学生への追加経費を加味した費用計算は問題ないと考える。
  • Lena Adamsonストックホルム大学准教授
    私は、授業料徴取の導入や、導入後の結果分析がされていないことに批判的であった。我々は、スウェーデン国内で留学生から得るもの以上に、彼らが卒業後にスウェーデン国内外にもたらす恩恵を失っている。
  • Jan Björklund前高等教育研究大臣(授業料導入時の大臣)
    高等教育機関が得た授業料の使途を調査すべきだ。機関が求める費用が高すぎる場合はその算出根拠を示すべきであり、減額も必要である。
  • Niklas Traneusスウェーデン文化交流協会マーケティング・ストラテジスト
    学生組合の意見はよく知られているものであったが、ほとんどニュースになっていない。この種の調査の実施が求められているのは、大学側が授業料戻入等の規則に関して曖昧さを残しているからだろう。政府は高等教育のさらなる国際化を進めようとしているが、私は授業料が撤廃される可能性は少ないと見ている。北欧諸国の傾向はその反対であり、フィンランドでも同種の授業料を導入している。

 

※EEA(European Economic Area)
欧州経済共同体(EEC)と欧州自由貿易連合(EFTA)にまたがる経済領域。両者は、1972年に自由貿易協定を締結し、さらに1994年1月には、双方にまたがる広範な共同市場を目指す欧州経済領域(EEA)を発足させた。

 

【出典】
University World News:New call for scrapping of unregulated tuition fees

【参考】
Sweden.se:Higher education and research

地域 北欧・バルト三国
スウェーデン
取組レベル 政府レベルでの取組
大学・研究機関の基本的役割 教育
学生の経済的支援 学費