【ニュース・イギリス】Times Higher Education(THE)世界大学ランキング2015-2016年度版について

 2015年9月30日、英国の高等教育専門誌Times Higher Education(THE)が、“World University Rankings 2015-2016”(URL1)を発表した。
 同ランキングはこれまで、米国に本社を置く国際的な情報企業Thomson Reutersから提供された情報を元に作成されていたが、今回からデータ収集・分析を自身で行い、研究論文データについてはエルゼビア社のデータベースであるScopusを使用している。
 同ランキングの評価基準は、以下のとおり、5つのカテゴリーに分類される13の指標から成っており(【 】内はウェイト)、教育、研究、知識移転活動、国際性といった大学の中核的使命に関わる活動が幅広く精査されている(評価法の詳細は「URL2」を参照)。

① 教育【30%】
 評判調査(15%)、教員1人当たりの学生数(4.5%)、博士号/学士号取得者比(2.25%)、教員1人当たりの博士号授与数(6%)、教員1人当たりの大学の収入(2.25%)
② 研究【30%】
 評判調査(18%)、教員1人当たりの研究費獲得額(6%)、教員・研究者1人当たりの発表論文数(6%)
③ 論文被引用【30%】
 研究の影響力(論文1本当たりの平均被引用回数)
④ 国際性【7.5%】
 留学生/国内学生比(2.5%)、外国人教員/国内出身教員比(2.5%)、国際共著論文数(2.5%)
⑤ 産業界からの収入(知識移転)【2.5%】
 教員1人当たりの産業界からの収入

 総合ランキングでは、上位200大学の個別順位、201位~400位までは50位ずつ(201-250位、251-300位…)、401位~600位までは100位ずつ(401-500位、501-600位)、601位~800位までは200位ずつ(601-800位)の順位が算出されている。
これまでは400位まで公表されていたが、今回から800位までが公表されている。
 また、昨年まで公表されていた、(1)工学・技術、(2)生命科学、(3)臨床・前臨床・保健、(4)物理学、(5)社会科学、(6)芸術・人文科学の6分野における上位100大学のランキングの提供は廃止されている。

【概観】
○総合評価:5年連続でカリフォルニア工科大学が1位に選ばれ、上位10位のうち6大学を占めた米国だが、100位以内にランクインした大学が39大学(昨年は45大学)、200位以内は63大学(昨年は74大学)とやや減少した。一方、英国は、上位10位以内、50位以内にランクインした大学は3年連続で同数であったが、100位以内には16大学(昨年11大学)、200位以内には34大学(昨年は29大学)がランクインし、存在感を増した(下表2参照)。また、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(昨年13位)が、米英以外の国からはじめて上位10位入りを果たしたのを筆頭に、ドイツ、フランスをはじめ、非英語圏の欧州勢が健闘した(下表3参照)。近年、ランクイン大学数が増加傾向にあった東アジアの国々は今年はやや足踏みした形となった。上位400入り大学数に関して言えば、中国は8大学(昨年は12大学)、韓国は8大学(昨年は9大学)、日本は6大学(昨年は12大学)と減少している。
○英国の大学:上位10位以内に選ばれた3大学は、昨年に続き、それぞれ順位を上げている。100位以内に選出された16大学には、唯一、Russell Groupに所属していないスコットランドのセント・アンドリュース大学が含まれている(111位→86位)。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学とロンドンのエリート大学から成るいわゆる「ゴールデントライアングル」の優位に依然変化はないものの、ゴールデントライアングル以外のエディンバラ大学(36位→24位)、ブリストル大学(74位→69位)、グラスゴー大学(94位→76位)、シェフィールド大学(121位→97位)等も順位を上げており、格差は縮まりつつある。
○日本の大学:日本の大学の最高位は今年も東京大学だったが、43位と、昨年の23位から大きく順位を落とし、アジアの大学としての最高位をシンガポール国立大学(26位)に譲り、北京大学(42位)にも抜かれる形となった。京都大学も88位(昨年59位)と順位を下げ、上位200位に入ったのはわずかこの2校であった。これまで200位以内に選出されていた他の大学は押しなべて順位を下げ、東京工業大学は(ここ3年で)125位→141位→201-250位、東北大学が(同)150位→165位→201-250位、また大阪大学も(同)144位→157位→251-300位と順位の下降に歯止めがかからない状況である。400位以内入りした大学も6校(東京、京都、東京工業、東北、大阪、名古屋)にとどまった。

なお、「【表1】総合上位10位と、50位以内に入ったアジアの大学、及び200位以内に入った日本の大学のランキング」、「【表2】英・米・日本・アジアの各ランクイン大学数比較」及び「【表3】国・地域別、上位400位入りした大学数(上位20カ国)・変遷」は以下の「URL3」を参照。

【各機関の反応】
・Russell Group
 100位以内にRussell Group所属の15大学が選出されたことは大変喜ばしいが、英国大学がランキングでの地位を維持するには、競争相手と比較して少ない高等教育や研究への助成を増やすことが不可欠

・Times Higher Education
 World University Rankings 2015-2016: results announced
 世界大学ランキング2014‐2015で米大学優位が後退、欧州勢が健闘-アジア首位が交替
(総評)
 THEランキング編集者のPhil Baty氏は、米大学の優位性が相対的に後退した背景には、データベースの改善により非英語論文の捕捉率が高まったことと、評判調査の回答者の地理的拡大があると分析した。
(アジア圏分析)
 シンガポールが12年の世界大学ランキングの歴史において初めてアジアの首位を獲得した。アジア全体では良いとも悪いとも言いがたく、中国が800位以内に37大学(50位以内に2大学)を送り込み安定している一方で、日本が200位以内に2大学のみ、韓国は100位以内に1大学のみと振るわなかった。
 前出のPhil Baty氏は「東アジアの大学は、国を挙げての助成や政策的後押しを受けてランキング向上に力を注いでいるものの、世界中の大学が努力しているので、結果に繋げることは至難の業である」と述べている。

URL1: https://www.timeshighereducation.com/world-university-rankings/2016/world-ranking#!/page/0/length/25
URL2: https://www.timeshighereducation.com/news/ranking-methodology-2016
URL3: http://www-overseas-news.jsps.go.jp/pdf/kaigainews/201510_lon02.pdf

地域 西欧、その他
イギリス、その他の国・地域
取組レベル 大学等研究機関レベルでの取組
統計、データ 統計・データ