【ニュース・イギリス】Policy Exchange(英国大手シンクタンク)が現在の英国大学への助成分のうち最大£5億を継続教育カレッジにまわすべき、とする報告書を発表

2015年10月19日、Policy Exchange(英国大手シンクタンク)は、“Higher, Further, Faster, More: Improving Higher level professional and technical education(より高く、遠く、速く、多く: より高次の職業・技術教育を目指して)”を発表した。
報告書によると、授業料が導入されて以来、高等教育界の収入は増加傾向にあり、2009学事年度(以下「年度」)から全体で26%の増額となっており、大学は£123億もの累積剰余金(高等教育機関全体の年間予算の48%にあたる)に安穏としている。対照的に、継続教育カレッジ(以下「カレッジ」)は成人技術予算が2009年度から24%もの削減となっているなど、収入に著しい落ち込みがみられる。国立監査事務局によると、全体で25%以上のカレッジが1年以内に財政破綻に追い込まれる可能性もあるという。
報告書は、英国における技術者教育不足が将来の労働市場に深刻な影響をもたらす可能性があることを指摘している。具体的には、
・王立工学アカデミー(Royal Academy of Engineering)は、英国では2020年までに(既存の数に加えて)更に83万人のエンジニアが必要になると予測している。
・必要とする企業の28%で、科学、技術、工学、数学の資格を持つ技術職の採用が困難になっている。
・ロンドンとイングランド南東部では、2014~2017年にかけて、2010年~2013年時と比較してプラス20%の建設労働者、特に熟練した技術者が必要になると見られている。
また、報告書は以下のような提案をしている。
・政府が直近に発表した”Productivity Plan”の一環である、Institute of Technologyの設置に関し、大学とパートナーシップを結ぶより、機関独自の技術資格(学位)授与制度を創設するべきである。
・Industrial Partnership団体(航空、デジタル、原子力など、特定分野ごとの連合体)の権限を拡張し、新設する研修修了資格を含めた技術者資格全てについて、プログラムを検討し、資格を認定する権利を与えるべきである。

【他機関の反応】
・英国大学協会(UUK: Universities UK)
Nicola Dandridge協会長は、大学か継続教育カレッジの「どちらかを優遇する」ような考え方は誤りであり、双方で協力していくことが英国の経済成長に不可欠であると述べている。また、授業料値上げは、公的助成の削減を補填する手段として、政府が大学に許可したことであり、大学の台所事情は決して左団扇ではないと強調している。

 

英国大学協会(UUK: Universities UK): Response to Policy Exchange report on university funding 

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