【ニュース・イギリス】Dame Ann Dowling教授による産学連携共同研究に関する最終報告書

2015年7月2日、ビジネス・イノベーション・技能省(BIS:Department for Business, Innovation and Skills)委託によるDame Ann Dowling教授(王立工学協会長)による産学連携共同研究に関する最終報告書が発表された。
本報告書は、
・政府はいかにして、煩雑な手続きややりとりを減らして、産業界と世界トップレベルの大学の研究者との関係を支援するべきか
・政府はいかにして、研究者と産業、特にイノベーション創出に注力している中小企業との関係を育て支援するべきか
について特に焦点を当てたものである。

報告書は、地域ごとの会合やワークショップの結果、そして学術および産業界双方から提出された210以上の関連書類を踏まえてまとめられたものである。
同報告書によると、現行の産学連携制度は複雑で使い勝手が悪く、英大学で行われている卓越した研究から、産学連携の効果を引き出すに至っていない。そのような状況を打破するには、制度の数を減らし、仕組みをより単純化すべきであるとしている。
また、研究評価制度(Research Excellence Framework)は産業へのインパクトに評価を与えているが、この変化は更に推し進める必要がある。
Dowling教授は言う。「大学には、産学連携を支援・促進するような文化が必要である。英国では、応用研究について見下すような傾向があるが、実際に相談した研究者たちからは、産業界の事業への関与は非常に積極的に受け止められた。彼らは、明らかなインパクトがあり、将来的に素晴らしく見込みとやりがいのある面白い事業に取り組みたいと考えている。」
市場には、短期の事業単位の協力を、実用化を目指した長期の協力に発展させる際のギャップが存在する。そこで報告書は、新たに”Collaborative Excellence”賞を創設し、産学の個人的協力を、長期的な集団的協力へと発展させる誘引となるような助成を与えるよう提案している。
2013年のInnovate UK(イノベーションを促進するためのBIS傘下の機関。前身は技術戦略審議会)の産学連携R&D助成についても触れられており、事業が2つ以上の学術関係機関との連携であった場合の産業経済効果(粗付加価値=£9.67)が、そうでなかった場合(粗付加価値=£4.22)の2倍以上になることが挙げられている。
Dowling教授によれば、「産学連携はイノベーションの生態系において重要な役割を果たしているが、イノベーションは複雑で直線的ではないため、イノベーションを支援するための政策が複雑なものとなってしまい、特に中小企業の参入の障壁となっている。政府は、支援のプロセスを単純化するよう制度を見直す必要がある。」
ジョンソン大学・科学担当閣外相は本報告書を歓迎し、英国が欧州一、イノベーションを実行しやすく、特許がとりやすく、起業しやすい国となるよう、報告書の提案について検討していきたいと述べている。

URL1: https://www.gov.uk/government/publications/business-university-research-collaborations-dowling-review-final-report
URL2: http://www.raeng.org.uk/news/news-releases/2015/july/break-down-barriers-to-university-business-collabo

地域 西欧
イギリス
取組レベル 政府レベルでの取組
行政機関、組織の運営 政策・経営・行動計画・評価
大学・研究機関の基本的役割 研究
社会との交流、産学官連携 産学官連携