2016年3月4日、ジョンソン大学・科学担当相は、英国を洪水、飢餓、エボラ出血熱などの地球規模課題に対処するための研究の最前線にするという政府の公約を実現するための予算を発表した。
発表によると、2016年4月からの5年間で£263億という前例のない規模の予算が科学研究に配分され、年間£47億の科学関係予算が従来どおり確保される。また、科学研究インフラに対しても2021年までに£58億という記録的な額が措置される。
予算には、地球規模の環境問題に取り組む科学プロジェクトや企業に配分される£15億の「地球規模課題研究基金(Global Challenges Research Fund)が新規予算として含まれる。同基金は、既にジカウィルスの研究のための緊急公募に£100万が使われた。
デュアル・サポート・システム(競争的資金と大学への運営費交付金を並存させる制度)は維持される。バランスは大学の運営費交付金に有利な方向に見直される。すなわち、現在研究会議に配分される予算£1あたり63ペンスが運営交付金として大学に配分されているが、この額は2020年までに65ペンスとなる。
また産学連携を促進・強化するため、「英国研究パートナーシップ投資基金(UKRPIF: UK Research Partnership Investment Fund)」を通じて2018年から2021年の間に、引き続き£4億を助成することが確認された。UKRPIFによって初期には英国の高等教育機関に£5億が投資されたが、これは民間企業や慈善団体からの£14億以上の共同投資を呼び込んだと見込まれる。
今回の発表は今後2年間の最終助成金配分と2018/19年度以降の予算見込みである。政府は次に7つの研究会議を1つの英国研究会議(Research UK)の下に集約し、科学研究への投資からより大きなリターンを得るというナース報告の提案を実行することを検討している。
GOV.UK:Government to invest record £26.3 billion in UK’s world-class science until 2021
科学技術予算配分(2016/17年度~2019/20年度):The Allocation of Science and Reserch Funding 2016/17 to 2019/20 (PDF)
【関連記事】
・イングランド高等教育財政会議(HEFCE: Higher Education Funding Council for England):ビジネス・イノベーション・技能省がHEFCEに対し、2016/17財政年度の助成金配分に関する通知を発出。
来年度2016/17財政年度の高等教育への助成は£4億7,800万の資本金も含めて£37億となる。
(教育)
・STEM(科学、技術、工学、数学)分野及びその他の費用がかかる分野に関し、昨年発表した秋期財政報告書のとおり、助成額を維持する。
・首相が目指す社会的に不利な背景を持つ学生の高等教育参加率の向上に向け、学生機会奨学金(Student Opportunity funding)の有効利用により、高等教育参加率が低い地区の当該学生への支援を推進する。また、社会的に不利な背景を持つ学生を多く採用している機関への重点配分が求められる。
(研究)
・質評価に基づく助成とデュアル・サポート・システムの再確認。
・2021年までの教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)の完成。
・2021年までに£4億を英国研究パートナーシップ投資基金(UKRPIF:UK ResearchPartnership Investment Fund)に追加配分し、最低£8億の民間投資を大学研究に呼び込む。
(知識交換)
・高等教育イノベーション基金(HEIF:Higher Education Innovation Fund)を現在のレベルで維持。
・成果に基づく助成金配分の継続。
Higher Education Funding Council for England:Funding for higher education in England for 2016-17: HEFCE grant letter from BIS
・英国研究会議 (RCUK): 政府の予算配分に関する声明
2016年3月4日、英国研究会議 (RCUK: Research Council UK)は政府による研究イノベーション予算の発表を受けて、来週にも各機関への支出見通しと優先項目を示す予定であると発表した。
大幅な歳出削減があったにも関わらず、昨年11月に発表された包括的歳出計画(Comprehensive Spending Review)では研究に対して全般的に前向きな予算配分であった。特に地球規模課題研究基金(Global Challenge Research Fund: GCRF)に対する£15億の予算配分は英国の研究が世界レベルに発展する機会を作り出し、国際的な研究の進展を支援することになる。
プログラムベースの特別配分や新規GCRFの性質から、個々の研究会議が現在進めている課題との摩擦が生じるであろう。これに対処するために困難な決定を下す必要が生じる場面もあるかもしれない。しかし研究会議(RCs)は予算内容を十分に分析し、詳細な配分計画を準備していく。
Research Council UK:Research Councils’ response to budget allocations announcement