【ニュース・イギリス】2017年全国学生満足度調査(NSS)結果発表

2017年8月8日、イングランド高等教育財政会議(HEFCE:Higher Education Funding Council for England)は2017年全国学生満足度調査(NSS:National Student Survey)の結果を発表した。30万人以上の最終学年の学生が参加し、回答率は68%だった。そのうち84%が全体的な教育の質に満足していると答えた。

 

学生の満足度は高く、85%の学生は教員の講義の質が良く、興味を引く内容であり、知的好奇心が刺激されたと答えている。
今年のNSSは「学習コミュニティ」、「学習機会」、「学生からの意見」という新しい質問事項を設け、学生の授業参加に関する新しい分析が加わった。この改訂は英国の大学、カレッジ、学生間の協議によって行われた。

 

今回の改訂部分に関する調査結果によると、84%がより深く概念を探求でき、学んだことを応用できる学習環境が与えられたと答えている。77%が学習コミュニティに属していると実感し、他の学生とともに学べる良い機会であったとしている。
調査内容の変更により、2017年の結果をこれまでの結果と比べることは妥当ではないとしている。

 

この調査結果は、学生のアカデミックな経験の向上のために各高等教育機関により利用される。今回新たに加えられた調査の結果は今後の課題として注目されることになるだろう。
また調査結果はUnisatsのウェブサイトに掲載され、学生がどこの大学で何を学ぶか、を選択する際の重要な材料となる。
2017年の調査は、530の大学やカレッジの情報がカバーされており、継続教育機関などの代替高等教育機関が多く参加したため昨年度より掲載数が増加した。

 

Higher Education Funding Council for England:National Student Survey 2017 results show high levels of student satisfaction and engagement

 

【メディアの反応】(2017年8月9日付)

 

○BBC News
今回の調査結果は大半の英国学生は大学の教育の質に満足しているというものだった。
しかし、6月に発表された高等教育政策研究所(HEPI:Higher Education Policy Institute)の同様の調査結果では、35%の学生のみが大学の教育は学費に見合うものであったと答えており、これは5年前の53%よりも更に落ち込んでいる。
また調査実施に当たり、学費を巡り英国学生連合(NUS:National Union of Students)が調査ボイコットを呼びかけたことが多少結果に影響を及ぼしているとみられる。昨年より参加人数が8,000人減少している。
この調査結果は大学・科学担当大臣のJo Johnson氏が懸念している「大学が提供する教育の質が学費に見合うか」という問題に焦点を当てたことになった。

 

BBC News:Students satisfied with degree courses, poll suggests

 

○Times Higher Education
NUSが呼びかけた教育評価制度(TEF:Teaching Excellence Framework)に対する抗議のためにCambridge, Manchester, Oxford, Sheffield等の大学でNSSへのボイコットが行なわれたのため、それらの大学の結果が反映されなかった。
12大学の調査結果が50%以下の回答率のため結果に含まれなかった。約300,000人の回答を得られたが、2016年の312,000人から減少しており、回答率も72%から68%と減少している。
これは、TEFの評価基準項目にNSSの調査結果が反映されると発表されたため、25の学生組合が調査へのボイコットを呼びかけたことが原因とされている。TEFの評価結果に基づき、大学がインフレ率にあわせて学費を値上げすることを可能にすることに対する抗議である。しかし本案は政府により延期が決定されている。

 

“TEFを潰せ!”をモットーに展開されたNSSのボイコットは、調査結果を使用不可能にすることが目的であった。しかしTEFの議長であるChris Husbands氏は「NSSの結果はTEFで金、銀、銅のいずれかの評価になった大学に大きな影響は与えておらず、教育の質を見るための正確なものではない」とコメントしている。

 

教育省は「学生のNSSのボイコットの悪影響はどの大学にもない」と表明しているが、他方でKings’s College London上級講師のCamille Kandiko Howson氏は「どのような影響が出るかもはっきりしていない。TEFが思ってもいなかった結果に終わった大学が抗議をする言い訳を与えるだけである。TEFを評価する側にとって良い結果が出たところと十分な調査結果が得られなかったところを区別するのが難しくなる。また、無回答の大学が広がっている中で、学生が真剣に回答せず、すべての質問項目に低い点にチェックして提出した場合などもあり、NSSをTEFなどの評価に使うことは困難になっていくのではないか。」と述べた。

 

大学組合(UCU:University and College Union)の書記長であるSally Hunt氏は「TEFの廃止を求める。今年のTEFの結果発表後の反応を見ると、学術界の支持を得ているとは思えず、一方今年のNSSに対する支持もまた欠如しており、学生も同じ思いである。もし政府が本気で学生への教育の質の向上を考えているのであれば、これら欠陥のある評価制度を廃止するべきで、教育者に対する不安定な雇用契約の広がりの改善に対して取り組むべきである。」と述べた。

 

Times Higher Education:National Student Survey 2017:campuses omitted after NUS boycott

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