2017年6月8日、Quacquarelli Symonds (QS)社はQS University Ranking 2018を発表した。
評価指標は世界的な高等教育機関の主要な活動を包含する6つの項目からなる。
① | (学術界の)研究者による評判(40%) |
② | 雇用者による評判(10%) |
③ | 学生一人当たりの教員数(20%) |
④ | 教員一人当たりの被引用論文数(20%) |
⑤ | 外国人教員比率(5%) |
⑥ | 留学生比率(5%) |
第14回目の本ランキングでは84カ国から950大学の順位を示している。6年連続でMassachusetts Institute of Technology(MIT)が首位をキープし、米国の3大学が僅差でそれに続いている。10位内の顔ぶれは昨年と変化がない一方で、中国の6大学が100位以内に躍進し、政府の投資や学生の流動性に対処したロシアの大学はその努力が実った結果となっている。
ケンブリッジ、オックスフォード、University College London(UCL)、インペリアルは10位以内に留まっているが、2年連続で英国の大学は苦戦を強いられている。EU離脱や2017年の総選挙の影響で英国の大学の海外との連携がさらに困難になるかはこれから明らかになるだろう。また、フランス、ドイツやその他ヨーロッパ諸国での政治的な変化が今後高等教育界に様々な変化をもたらすだろう。
TOPUNIVERSITIES:Out Now:QS World University Rankings® 2018
【QS World University Ranking ®2018】
Top20
2018 | 2017 | University | Country/region | |
- | 1 | 1 | Massachusetts Institute of Technology(MIT) | USA |
- | 2 | 2 | Stanford University | USA |
- | 3 | 3 | Harvard University | USA |
△ | 4 | 5 | California Institute of Technology(CALTECH) | USA |
▼ | 5 | 4 | University of Cambridge | UK |
- | 6 | 6 | University of Oxford | UK |
- | 7 | 7 | UCL(University College London) | UK |
△ | 8 | 9 | Imperial College London | UK |
△ | 9 | 10 | University of Chicago | USA |
▼ | 10 | 8 | ETH Zurich(Swiss Federal Institute of Technology) | Switzerland |
△ | 11 | 13 | Nanyang Technological University(NTU) | Singapore |
△ | 12 | 14 | Ecole Polytechnique Federale de Lausanne(EPFL) | Switzerland |
▼ | 13 | 11 | Princeton University | USA |
△ | 14 | 16 | Cornell University | USA |
▼ | 15 | 12 | National University of Singapore(NUS) | Singapore |
△ | 16 | 15 | Yale University | USA |
- | 17 | 17 | Johns Hopkins University | USA |
△ | 18 | 20 | Columbia University | USA |
▼ | 19 | 18 | University of Pennsylvania | USA |
△ | 20 | 22 | The Australian National University | Australia |
△前年より上昇 ▼前年より下降
日本の大学で200以内に入った大学
2018 | 2017 | University | |
△ | =28 | 34 | The University of Tokyo |
△ | =36 | =37 | Kyoto University |
- | 56 | 56 | Tokyo Institute of Technology |
- | 63 | =63 | Osaka University |
▼ | =76 | =75 | Tohoku University |
▼ | =116 | =115 | Nagoya University |
△ | =122 | =130 | Hokkaido University |
△ | 128 | 135 | Kyushu University |
△ | =192 | 216 | Keio University |
△前年より上昇 ▼前年より下降
国・地域別(世界)上位400位入り大学数/上位20カ国とその変遷
順位 | 国・地域名 | 2018 | 2017 | 2016 | 2015 |
1 | United States | 75 | 78 | 79 | 79 |
2 | United Kingdom | 47 | 48 | 48 | 44 |
3 | Germany | 25 | 24 | 28 | 31 |
4 | Australia | 21 | 21 | 21 | 19 |
5 | France | 16 | 17 | 20 | 17 |
6 | Canada | 15 | 15 | 15 | 15 |
=7 | China | 14 | 15 | 15 | 13 |
=7 | Japan | 14 | 14 | 14 | 14 |
9 | Netherlands | 13 | 13 | 13 | 13 |
10 | South Korea | 11 | 11 | 9 | 10 |
=11 | Russia | 10 | 8 | 5 | 5 |
=11 | Taiwan | 10 | 8 | 9 | 7 |
13 | Spain | 9 | 8 | 8 | 9 |
=14 | Switzerland | 8 | 8 | 8 | 7 |
=14 | Sweden | 8 | 8 | 8 | 8 |
=14 | Italy | 8 | 7 | 6 | 13 |
=17 | Belgium | 7 | 7 | 7 | 7 |
=17 | New Zealand | 7 | 7 | 7 | 5 |
=19 | Hong Kong | 6 | 6 | 6 | 6 |
=19 | India | 6 | 7 | 7 | 5 |
【メディアの反応】
○ガーディアン紙(The Guardian)
ランキングされた76の英国大学のうち51大学は順位を下げた。昨年より400位以内、200位以内、100位以内の大学が減少した。まだEUにいるためEU離脱が原因とはできない。もっとも評価が下がったのは教員一人当たりの被引用論分数の指標である。76大学中57大学において昨年より下がっている。単純にこの結果は英国の大学の研究機関としての競争力低下を意味している。
競争力低下はこの数年の実質的な研究資金の停滞が原因と考えられる。このランキングで上位に位置する大学は十分な公的/私的の助成を受けているが、例えば英国の公的研究助成金は2010~2011学事年度のレベルに戻っていない。また、英国の大学拡大に伴う補助的な大学教員の増加も影響している。補助的な大学教員は、シニア教員の教育の負担を軽減しているが、研究への関心が低いため、教員総数増加に応じて被引用論分数が増加していない。
他の心配の種は英国大学における国際化である。QSのデータでは世界の高等教育界はどんどん国際化を推進しており、留学生の比率は増加の傾向にある。しかし英国の76大学はその傾向から外れている。56の英国大学は毎年留学生比率が減少しており、英国の平均は昨年より低い。今年初めに大学入試機関(UCAS:Universities and Colleges Admissions Service)が発表したEUからの願書は7%も減少したという結果もこの事実を裏付けている。しかしこれは英国に限ったことではなく、米国でも留学生比率において157大学中、107大学が減少している。これは最近の政権交代の影響の可能性もある。
国際化というのはいろいろな意味で高等教育の質に影響が出る。第一の影響は財政で、公的資金援助が減少している英/米国の大学では、留学生の割り増し授業料で競争力を維持することが可能である。
第二に研究の質への影響である。1981年において英国の論文引用指標は90%が国内の論文のものであったが、その後、国内論文の割合は減少し半分となった。現在の主な英国の論文引用指標は国際的な共著論文のもので、増え続けている。
国際化の良い面は国際関係を育み、国としてのソフトパワーを向上し、英国高等教育の名声を高めることである。島国根性のままでは、海外からの教員と留学生は減っていくだろう。もし英国政府が断固として人の移動の自由を認めないのであれば、過去のスイスと同様にホライズン2020のような資金援助プログラムにアクセスできなくなる恐れがある。つまり国際化/移動の自由がなくなった場合、被引用論文数や研究者の評判といった指標に、もっと致命的な打撃があるであろう。政治的姿勢に関わらず、英国高等教育の脅威であるEU離脱をうまく切り抜けることが、将来の成功を考える上で、英国大学の優先課題でなくてはならない。
The Guardian:Top 200 universities in the world 2018:the UK’s rise and fall